内容説明
川面に消えたほたるの光は、移ろう人の心の幻か。幼い異母妹と懸命に生きた貸本屋の男が、愛する妻の借金に戸惑う(「みんな偽物」)。悪い男に強請られる女が泣きついたのは、蝮の異名をもつ曰く付きの岡っ引き吉次だった(「ほたる」)。浮気、妻への暴力、ささやかな幸せにつけ込む債鬼の罠―江戸の市井で泣く人々を、心に鬼を飼う仏の隠居、慶次郎が情けで救う傑作シリーズ第十弾。
著者等紹介
北原亞以子[キタハラアイコ]
東京生れ。石油会社、写真スタジオに勤務後、コピーライターとして広告制作会社に入社。その間に、創作活動を開始し、1969(昭和44)年「ママは知らなかったのよ」で新潮新人賞、同年「粉雪舞う」で小説現代新人賞佳作を受賞。’89(平成元)年『深川澪通り木戸番小屋』で泉鏡花文学賞、’93年『恋忘れ草』で直木賞、’97年『江戸風狂伝』で女流文学賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
10
前々から思っているのですが、この作家の感じは藤沢周平さんを思い浮かべます。藤沢さんほどは厳しくはないのですが、人情の機微も含ませて人生の大変さなどをうまく描かれています。まだ2冊目ですが今後も少しづつ読んでいこうと思っています。2014/03/24
Kira
6
第十集。珍しく島中賢吾を中心にした二篇「長い道」と「五月雨るる」を興味深く読んだ。特に後者は、若い頃に好きだった女と再会した賢吾の揺れ動く気持ちが丁寧に描かれている。表題作の「ほたる」は、蝮の吉次がまたしても「やさしい男」になっている話で、作者は吉次を愛してやまないのだなと思った。 2019/08/11
山内正
3
知らないよ見間違いしたと後悔してもと老いた女が 人を助けてきたおせんの子が付け火する訳がない 店に盗みに来た少年を喜助が止めに入り怪我をしたと万屋の主人が 店を辞めようとしたら喜助さんが 人の役に立ってると嬉しかったよ 大番所へ送られてるよ今は 寺の僧も違うって言ったのに 商売繁盛ばかり祈った罰だと まだ調べ書は書いてなくてと儀息子が引継ぐ 私は人にそう言って貰える程の人間じゃ無いんです どうして嫁が来ねえ 男が前から居て姿を消し置文を さがさーと紙切れが 見間違いと書いておけと儀息子に2022/06/27
山内正
3
四十後半の一年も早い 札差の挨拶にニ両を 暴れた浪人を押え表沙汰にせずに 指南所の比佐栄に習い娘が多い 大伍は妻にいつも文句を言う 息子の士官の話に決まれば西国について行く気だ 気難しい夫と離婚しようかと考える 娘の咲栄が相談だとやって来た 弟武馬に心寄せた娘はお母様の真似は出来ませんと言った事も 養子にと相談を弟がと話し 母さんが好きだった野々宮は 今一人です、五つ年上の女房が亡くなられ、お母さんが心配なんですと娘が 東慶寺に行ったらと勧める 来年東慶寺に駆け込むのかと 2021/12/20
キーにゃん@絶対ガラケー主義宣言
3
男女の中は、当人同士しかわからない。当人同士にもわからない。2013/11/19
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