出版社内容情報
上司からの命令は絶対。しかし己の心に背いてでも、なすべきことなのか――。忠と義の間で揺れる心の葛藤を描く珠玉の六編。
信州松代真田家に仕える堀平五郎は、藩の権力抗争に巻き込まれる。彼には父の代から伝えられる秘命があった（「錯乱」）。妻となった女の過去に囚われる黒塚喜介。佐渡支配組頭配下の広間役に命じられたことを好機とし、間男を佐渡送りの水替え人足とするが……（「佐渡流人行」）。己の心に背いてでも、なさねばならぬことがある。されどその生に義はあるのか。人生の葛藤を描く珠玉の六編。
内容説明
信州松代真田家に仕える堀平五郎は、藩の権力抗争に巻き込まれる。彼には父の代から伝えられる秘命があった（「錯乱」）。妻となった女の過去に囚われる黒塚喜介。佐渡支配組頭配下の広間役に命じられたことを好機とし、間男を佐渡送りの水替え人足とするが…（「佐渡流人行」）。己の心に背いてでも、なさねばならぬことがある。されどその生に義はあるのか。人生の葛藤を描く珠玉の六編。
著者等紹介
縄田一男［ナワタカズオ］
１９５８（昭和３３）年、東京生れ。専修大学大学院文学研究科博士課程修了。歴史・時代小説を中心に文芸評論を執筆。’９１（平成３）年に『時代小説の読みどころ』で中村星湖文学賞、’９５年に『捕物帳の系譜』で大衆文学研究賞を受賞（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
38
縄田一男氏が「組織と人間」をテーマに編んだ全6話のアンソロジーは、不運、不幸、狂気によって人生を狂わせた男たちの物語。松本清張「佐渡流人行」と神坂次郎「兵庫頭の叛乱」以外は既読でしたが、どれも珠玉の短編で何度読んでも面白い。他の4作品は池波正太郎の直木賞作「錯乱」や藤沢周平の海坂藩もの「小川の辺」、滝口康彦「拝領妻始末」、山田風太郎「笊ノ目万兵衛門外へ」。なかでも「錯乱」と「笊の目万兵衛門外へ」は凄いな。2022/11/15
yamatoshiuruhashi
24
武士の論理、世界の理不尽さを主題に含む、アンソロジー。豪華執筆陣ですよ。池波正太郎、松本清張、藤沢周平、神坂次郎、滝口康彦、山田風太郎。もし本当にこんな大作家に執筆をお願いに回ったのだったら大変な苦労と時間が必要だったでしょう。アンソロジーってのは便利で美味しいですね。良いとこどりの一冊です。2018/07/25
Kira
16
図書館本。六篇のアンソロジー。特に気になったのは松本清張氏の「佐渡流人行」で、松本氏の時代小説に魅せられた。佐渡へ流罪にされ、金山で働かされる地獄絵図に迫力があった。初読みの滝口康彦氏「拝領妻始末」の理不尽さには憤慨した。読み返すたびに味わい深いのは、池波正太郎氏の「錯乱」。さすがである。2022/06/22
Tatsuhito Matsuzaki
12
戦国時代から幕末期までの『主命』に殉じ、逆らい、或いは抗いつつも葛藤の果てに生き抜いた者たちを描いた６作品のアンソロジー。 池波正太郎、松本清張、藤沢周平、神坂次郎、滝口泰彦、山田風太郎という六人の大家が描いたそれぞれの作品は全て深く濃い傑作揃いです。 私的には、推理小説&ミステリーの巨匠である松本清張作「#佐渡流人行」のストーリー展開収束と、忍法帖シリーズのイメージが強い山田風太郎作「笊ノ目万兵衛門外へ」の主人公の描き方に感嘆しました。 2022/01/15
マーブル
12
『武士道』を読んだばかりで味わい深かった。美化された武士道の礼賛ではなく、幻想としてのそれを再確認した思い。理不尽なまでの束縛、従順、犠牲的精神は猛獣を飼いならす呪文。被支配者をコントロールする教義。互いに牙を持つ者同士が傷つけあうことを避けるための首輪。やがて必要な時にだけ自由を与える檻として。しかし、首輪をつけられることを良しとせず、檻に入ることを拒む者もいたはず。全てが受け入れていたとは思えない。いかに厳しい掟であっても、逆に厳しい掟があった裏には、そうでなくては統制できない魂があったのではないか。2021/05/28
