内容説明
かつて銀座に川端康成、白洲次郎、小津安二郎らが集まる伝説のバーがあった。その名は「おそめ」。マダムは元祇園芸妓。小説のモデルとなり、並はずれた美貌と天真爛漫な人柄で、またたく間に頂点へと駆け上るが―。私生活ではひとりの男を愛し続けた一途な女。ライバルとの葛藤など、さまざまな困難に巻き込まれながらも美しく生きた半生を描く。隠れた昭和史としても読める一冊。
目次
序章 出会い
第1章 高瀬川のほとり
第2章 祇園芸妓おそめの誕生
第3章 木屋町「おそめ」の灯
第4章 「おそめ」の銀座進出
第5章 凋落の始まり
第6章 俊藤浩滋の妻として
終章 流れの人よ
著者等紹介
石井妙子[イシイタエコ]
1969(昭和44)年、神奈川県茅ヶ崎市生れ。白百合女子大学卒。同大学院修士課程修了。’97(平成9)年より、毎日新聞囲碁欄を担当。囲碁の記事を書く傍ら、約5年の歳月を費やして『おそめ』を執筆。綿密な取材に基づき、一世を風靡した銀座マダムの生涯を浮き彫りにした同書は高い評価を受け、新潮ドキュメント賞、講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞の最終候補作となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふ~@豆板醤
28
3。以前読んだ雑誌の「経営者がオススメする本特集」で紹介されていて気になってた本。戦前の京都で生まれ育ったおそめさんの半生が描かれている。持って生まれた美貌と不思議な求心力でお客を魅了するおそめさん。女給として働く厳しさからもバー経営に活かせるものを探そうとする姿勢や辛い中でも自分の夢を持ち続ける強さなど、学べるところがたくさん。「将来は絶対、食べるもんと寝るとこだけは他人さんの世話にならへん」2017/05/09
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
25
京都と銀座でバーを経営し、飛行機で行ったり来たりして「空飛ぶマダム」と呼ばれた文壇バー、「おそめ」のママ秀の生涯。京都の老舗の子に生まれながら母親が婚家を飛び出した為に、母娘暮らし。母の家出の理由は舅に暴行されそうになり、それを知った夫から何故か下女扱いされ、それでも我慢してたが舅が秀の妹にワサビの塊を食べさせ、泣き喚くのを楽しんで笑ったのを見たからで、ほんとクズのような婚家から飛び出たのである。秀自身も芸者時代の水揚げ、幼馴染の父親に囲われるという不幸など、物凄く悲惨な目に遭う。さてさて人生の終わり方は2023/01/28
さきん
25
家に何故か2冊あったので1冊放出で読書。水商売に入っていく人はこういう人生なのかという意味で新鮮な印象を受けた。銀座では伝説的なおそめという店を切り盛りしていたそうで、著名人が足しげく通っていたようだ。映画監督になって成功していった旦那とは対照的にいろいろスキャンダラスな事件を経験して店の勢いが無くなっていく。2018/10/01
ばっか殿すん
22
伝説の空飛ぶマダム「おそめ」こと上羽秀さんのノンフィクションもの。読み進めるほどに小説的な人生に興奮し、ため息が出る。。天真爛漫であるが、凛として可憐な一面もあり、陽炎のような印象も抱かされる。。作者の表現の上手さ所以でしょうが、感情移入し、一気読みしてしまいました。掛け値なしに面白かったです。2014/08/07
yukalalami
21
「夜の蝶」のモデルでもあり銀座、京都でバーを営んだ伝説のマダムの生涯を描く。お客さまを心から大切にし、自分も遊ばせてもらうかのように楽しむ天性と魔性を合わせ持ったおそめさんの魅力が読み進めるにつれどんどん伝わってきて、古き良き時代に思いを馳せる。名だたる文豪や財界人から愛され同業のママ達からは嫉妬と非難を浴び栄枯盛衰を経験した数奇な人生。たおやかだが強い信念の持ち主で一途な愛を貫いた秀の生き様に心惹かれた。 2015/11/28