内容説明
インターネット上に溢れる情報の中で、法律に抵触するものや犯罪に結びつくものを監視し、調査するサイバー・パトロール会社「クマー」。大学一年生の三島孝太郎は、先輩の真岐に誘われ、五カ月前からアルバイトを始めたが、ある日、全国で起きる不可解な殺人事件の監視チームに入るよう命じられる。その矢先、同僚の大学生が行方不明になり…。“言葉”と“物語”の根源を問う、圧倒的大作長編。
著者等紹介
宮部みゆき[ミヤベミユキ]
1960(昭和35)年、東京生れ。’87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞。’89(平成元)年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞を受賞。’92年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞を受賞。’93年『火車』で山本周五郎賞を受賞。’97年『蒲生邸事件』で日本SF大賞を受賞。’99年には『理由』で直木賞を受賞。2001年『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞、’02年には司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)を受賞。’07年『名もなき毒』で吉川英治文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
276
宮部みゆきを読んでいると、落語を聴いているような気分になる。もっとも明確に滑稽噺や人情噺だと分けられるものは少なく、舞台や時代や登場人物で片方に寄ったり混ぜ合わせて読みやすく面白いドラマに仕上げていく。いわば話芸の巧さで多彩な創作をしており、その分類法でいけば本書は人情噺を加味した怪談噺か。空を飛ぶ有翼人を匂わせたと思うと現代社会での連続失踪・殺人事件に話が移り、謎を追う関係者が社会の矛盾に遭遇しながら思いがけない事態を経て相知ることになる。鮮やかな語り口や予想外の展開に読者はついていくしかない。(続く)2021/11/03
bunmei
227
2018年、初読みは宮部作品の長編、先ずは上巻から。連続指切り殺人事件を軸として、サイバーパトロールのアルバイトをしている大学生の孝太郎と持病を患いながらも、元刑事の勘で事件の臭いを嗅ぎ分ける都築の目線で物語は展開。そこに、孝太郎のバイト仲間の森永やリヤカー爺さんの失踪、そして、筒型ビルの上の動くガーゴイルの都市伝説…。様々な事件への布石が上巻にばら撒かれています。これらが一つ一つが絡み合っていくであろう中、下巻にグッと興味も惹きつけられます。これが宮部作品なのでしょうね。2018/01/07
yoshida
146
西新宿にある廃ビル。円筒形からお茶筒ビルと呼ばれる。元刑事の都築は、お茶筒ビルの屋上にあるガーゴイル像が動いていると聞かされる。他方、ネット警備の会社でアルバイトをしている大学生の三島は、ホームレスの失踪が続いていることを知る。失踪を独自に調べていたバイト仲間の森永も忽然と消える。都築と三島はお茶筒ビルのガーゴイル像に行き当たる。現実の中にファンタジーの要素が絡む。夜に羽ばたくガーゴイル。並行する猟奇殺人事件がどうリンクするのか。宮部みゆきさんの筆力で読ませる。展開は全くもって謎。次巻を楽しみに読了。2021/01/11
KAZOO
139
宮部さんの長編で、サイバーテロに関するものだと思っていたのですが、若い人が主人公のファンタジーという趣が強いものだと思いました。大学生で、サイバーテロ監視会社で働く主人公がいなくなってしまった同僚の大学生を探すうちに元刑事の人物と一緒に捜索し始めます。それまではいわゆる現代もののミステリーだと思っていたのですが、ギリシャ神話に出てくるハルピュイアのようなもので出現するに及んでこれはファンタジーものだと理解しました。結構楽しそうな気がします。2024/10/30
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
131
サイバーパトロールをする企業でバイトを始めた孝太郎。全国各地で起こり始めた死体の指を切断するという猟奇的な連続殺人事件。一方、孝太郎の周辺でも起こる謎の事件。冒頭からぐいぐいと引っ張っていく力はさすが。宮部みゆきは「社会派ミステリー」が一番面白いと思うのだが……、なんとなく違う方に展開してないか………。ちょっと不安を感じながらも中巻に進む。2018/02/25