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新潮文庫
根津権現裏

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  • サイズ 文庫判/ページ数 377p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784101356167
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

根津権現近くの下宿に住まう雑誌記者の私は、恋人も出来ず、長患いの骨髄炎を治す金もない自らの不遇に、恨みを募らす毎日だ。そんな私に届いた同郷の友人岡田徳次郎急死の報。互いの困窮を知る岡田は、念願かない女中との交際を始めたばかりだったのだが―。貧困に自由を奪われる、大正期の上京青年の夢と失墜を描く、短くも凄絶な生涯を送った私小説家の代表作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

こばまり

44
台詞の掛け合いなど芝居のような滑稽みがあるが、友人の自死をモデルにしていること、著者自身も赤貧の中早逝したこと、自称弟子の西村賢太氏も最早この世にいないことなどに思いを馳せるうちに、寂しい気持ちになってしまった。2023/06/19

メタボン

27
☆☆☆★ 序盤の、石崎に無心に行くもかれの剣幕に押されて引き下がってくるくだり。そして中盤の岡田とのやりとり。後半の岡田の自死に至る経過の語り。すべての根本に「貧乏」であることの嘆きが繰り返し出てき、滅入るかと思いきや、その飄々とした文体のせいか、意外にも、さくさくと読めた。それにしても明日の食べ物や着るものにこと欠く生活に加えて、足が不自由ともなれば、かなり辛い境遇なのに、それを良く文学に昇華させたと感嘆するし、再評価の機運を作った西村賢太もすごい。2017/11/09

ハチアカデミー

24
日本文学史上に残る、ひとつの奇蹟。大量に書かれ消費された「私小説」という文学ジャンルにおいて、本書は傍流に過ぎない。友人の自殺によって苦悩する主人公の私語りと世間への恨み辛み、そして「金がない」の叫び。独特の文体ではあるが繰り返しも多く、好事家の為の作品と言っても過言ではない。にも関わらず、本書に人生を変えられた男がやがて作家となり私小説を書き、結句芥川賞を受賞してしまう。そして、その作家が敬愛してやまぬ本書が、90年の時を超え文庫化されたのだ。本書の文庫版刊行という事実こそが、西村賢太の作品である。2013/04/15

軍縮地球市民shinshin

14
読むのに10日ぐらいかかってしまった。大正11年発表。作者は昭和7年、芝公園で凍死体で発見された不遇の作家である。最近は芥川賞を受賞した西村賢太が私財を擲って復権に努めている。本作は藤沢の代表作で長編私小説。不遇のうちに縊死した友人の生涯を、遺体を引き取りに上京した兄に、東京での生活を話す、というのが主な内容。友人も自身も金がなく、職もなく、今日の食費にも困る生活を送っている。金が欲しいという欲求と、自分らのように困窮している者には金持ちの家に泥棒に入ることも許されるのだ、とも書いてあり、不遇というのが2020/12/05

三柴ゆよし

14
私たちがこの地上に生を受けてより後抱える廃疾のほとんどすべては金により慰撫せられるものであるから、結句重要なのは金である。金が欲しい。ここに例えば一冊の小説が存在して、その主人公は、そうした私たち廃疾者の魂の叫びを悲痛なまでに声高に代弁する男であったとしよう。で、そんな正直な彼の声を読者たる私たちが好意的に受け止めるかといえば全然そんなことはなく、大抵の場合それは鼻水でもひっかけられておしまいなのだが、さてここに人生の健常者からすればまさしく鼻紙程度の価値しか持たないだろう小説に人生を救われた男がいる。2011/11/04

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