内容説明
愛に見放されていた高校時代、みすずが安らげるのは、新宿の薄暗いジャズ喫茶だけだった。そこには仲間たちがいる。亮、テツ、タケシ、ヤス、ユカ。そして彼らと少し距離をおく、岸という東大生。ある日、みすずは岸に計画を打ち明けられる。権力に、頭脳で勝負したいというのだ―。三億円事件には少女の命がけの想いが刻み込まれていた。世紀を超えて読み継がれる、恋愛小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
153
宮崎あおい主演映画の原作。 1968年の三億円事件と 18歳少女の恋を 絡ませた物語である。60年代の生き急いだ 若者たちの青春の雰囲気が心地良い。 「みすず」という少女の独白で語られる物語はひどく哀切で心苦しい。 ジャズ喫茶Bでの仲間との語らいと 苛烈な学生運動が この時代の青春だったのだろうか。 昭和40年代に生きた若者たちへの 讃歌の ような作品だった。2020/11/11
しんごろ
141
3億円事件の犯人は実は女子高生が絡んでたという話!完全に“昭和”を感じます(^^;)作者の自伝的な手記な感じで始まり、読み進めるうちに、これは実話なの?と、錯覚におちいるほど引きこまれ、ラストは悲しさ淋しさも感じる切ない作品ですね。BGMにはガロがいいと思ったんですが、残念ながらうちにはないので、村下孝蔵の『林檎と檸檬』がいいかな(^^;)2016/11/03
のんき
95
みすゞの切ない恋のお話。家に自分の居場所がない女子高校生みすゞ。ジャズ喫茶Bに居場所を見つけ、彼と知り合います。そして、みすゞは、生まれてはじめて「おまえが、必要だ」と彼から言われます。みすゞは嬉しくて、彼のために大それたことをしちゃいます。みすゞはスゴイなって思いました。彼のために、素直に凄いこと実行しちゃうんだもん。まあ、わたしにも、そんな素直で純粋な思春期があったような、なかったような2018/01/09
mii22.
72
一日一日がバカみたいに楽しかったり、わけもなく孤独で不安で淋しかったり、泣いたり笑ったり怒ったり..昨日と同じ日など一日もなかった十代の頃、辛いときにも心癒してくれる自分の居場所を見つけることができた私は幸せだったと思う。愛に見放され辛い少女時代を過ごしてきた主人公のみすずにも「B」という場所と仲間がいてくれたこと、生まれてきたことに感謝する気持ちが存在するようになってくれたことが嬉しくてわたしは泣いた。初恋は人生の中のひとつの通過点に過ぎないが、未来と過去を手に入れて大人になる最初の通過点かもしれない。2019/11/20
ほりん
40
友達からのおすすめ。オーソドックスなタイトルだと思ったら,なんと三億円事件についての小説。「私は実行犯」というまえがきから始まる。作者と同名の主人公が,独白体で当時のいきさつを語っていく。地名や犯行の状況などかなり詳細に描かれる。その後,事件の背景も明らかになっていく。岸の苦しい想い,みすずの切ない想いが胸に響いた。学生運動が盛んだった当時の雰囲気も伝わってきた。小説として十分面白いだけに,作家が本人であるかのような思わせぶりをしなくても・・・とそれだけが残念だった。2015/06/28