内容説明
「わたしの父親ってどんなひとだったんですか」ある日突然、十四年前に自ら命を絶った親友の娘が僕を訪ねてきた。中学生の彼女もまた、生と死を巡る深刻な悩みを抱えていた。僕は彼女を死から引き離そうと、亡き親友との青春時代の思い出を語り始めたのだが―。悲しみを乗り越え、新たな旅立ちを迎えるために、それぞれの「卒業」を経験する家族を描いた四編。著者の新たなる原点。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963(昭和38)年岡山県生れ。出版社勤務を経て執筆活動に入る。’91(平成3)年『ビフォア・ラン』でデビュー。’99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞を、『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。2001年『ビタミンF』で直木賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HIRO1970
228
⭐️⭐️⭐️⭐️重松さんは10冊目。4作品が入った短編集。雑誌連載をまとめた物です。それぞれの作品が長編でも書けそうな濃い内容で味わい深く心に沁みるような余韻を愉しめました。重松作品ではいつもは男親と男の子の組み合わせが多いような気がしますが、本作では女親や女の子の出現率が高く作品として完成度が高いような幅を広げる実験的な試みである様な感じがしました。重松さん作品のモチーフである死はそこここに配置されていますが、本作のテーマであるゆるしゆるされる関係には学ぶ所が多く我が家でも実践してみようと思いました。2016/08/19
zero1
222
死を背景にした4つの物語を収録。作品世界への引力が強い。「まゆみのマーチ」は母の強さと偉大さを表現した秀作。カットバックで描かれる回想が絶妙。「その日のまえに」を連想した。「あおげば尊し」は厳格な高校教師だった父が死の床に。息子の小学校教師は生徒と会わせる。死に興味を持つところは「夏の庭」と同じ。「卒業」は自殺した友人の娘が会いに来る。中学生の彼女は父親を知らない。自殺のDNAはある?「舞姫通信」とテーマが重なる。「追伸」は6歳の時に母親をガンで失った少年と継母の対立。再読でも重松節の炸裂が涙を誘う。2019/08/30
にいにい
163
重松さんらしい4篇の中編。全て、親の死を残された人々とともにどう向き合い、卒業し、許しを伴う心穏やかな道を進むかが描かれている。近親者の卒業を宣告されている身としては、心打つ描写ばかり。家族の拗れ、修復への苦難さを繊細に、切なく苦しく、でも、温かく見せてくれる。「まゆみのマーチ」は親の愛の理想型を。「あおげば尊し」は、生き様に国士を。「卒業」は、血のつながりの意味を。「追伸」は継母の不器用さ、配慮不足にやきもきしながら、家族になることを考えさせられた。じわ~っとしみこむ作品。「その日のまえに」よりも好み2016/01/13
kishikan
137
文庫版のためのあとがきに重松さんが書いているように、この本は始まりを感じさせる終り、を描いたもの。例えば、本と同タイトルの「卒業」の中で、「ママに言われたの。いろんなつらいことがあっても、最後は絶対にハッピイエンドにしなさいよって。」という言葉は、未来に向け生きる大事さを訴える。だけど4編共、死と向かい合う家族をテーマにし、それに自分の家族を思わず重ね合わせてしまうだけに、切なくて、つらくて、いたたまれなくなる。へたな論評は要らない。「まゆみのマーチ」「あおげば尊し」「卒業」「追伸」感極まる話だった。2013/04/07
Tanaka
123
まゆみのマーチがこの本の中で一番「好き」。2013/04/15
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