内容説明
名門トウボウは紡績から身を起こし、化粧品事業で世に知られる。だが長年にわたる粉飾決算のため、その屋台骨は蝕まれていた。常務取締役・番匠啓介の孤軍奮闘も虚しく、トウボウはその両翼をもがれてしまう。やがて、彼は東京地検特捜部にある疑惑を抱かれ―。経済界を揺るがせた企業崩壊、その渦中にいた者にしか描きえなかった、迫真の人間ドラマ。
著者等紹介
嶋田賢三郎[シマダケンザブロウ]
1946(昭和21)年生れ。早稲田大学大学院(商学研究科)修了。’74年、鐘紡株式会社(のちにカネボウに社名変更)に入社。2000(平成12)年同社取締役を経て、’02年常務取締役・財務経理担当に就任。’04年に同社を退社する。’08年、『責任に時効なし小説巨額紛飾』(文庫刊行時に『巨額粉飾』と改題)で作家としてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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扉のこちら側
59
2018年340冊め。フィクションの体を取っているが、カネボウ事件を描いている。著者は当時の役員とのことで、いっそノンフィクションで書いた方がすっきりしたのではなかろうか。フィクション小説としては読んでいてそう楽しいものではなかった。経済に疎いので用語は脚注で説明されているが、2000憶円の債務超過の異様さはド素人にもわかる。2018/07/18
Walhalla
33
明治から昭和初期にかけて国内企業売上高1位を誇った超がつくほどの名門企業が、粉飾決算を繰り返しながら崩壊していく様子を描いた作品です。社名は変えてありますが、モデルは明確ですね。著者である嶋田賢三郎さんは当時、この企業で常務取締役財務経理担当をされていたそうで、一連の経緯を全て目の当たりにしていると思うと、とても生々しさを感じます。私の知識レベルでは理解が追いつかない部分もありましたが、都度、会計用語が解説されているので、何とか置いてけぼりにされずに済みました。とても勉強になります。2022/03/01
かず
24
粉飾決算露呈により法人格を失ったカネボウをモデルとした小説。著者は末期に常務取締役・経理財務担当を務め、経営トップが強弁する巨額粉飾に対し断固として抵抗した人物。内部事情が事細かに記述されている。本小説を読んだ理由は、公認会計士取得を計画したため。もっとも、合格しても転職する意図はさらさらないが。本小説は、企業と監査法人、メインバンク等様々な主体が利己的な想いを元に行動する様がありありと描かれている。感想を一つに要約すると、「会計とは真実を見るためのツールである」ということだ。偽りは許されるはずがない。 2019/06/27
4丁目の父ちゃん
15
高杉良さんに夢中な頃、この作品のモデルは何処の会社???と探ってみたものです。この作品はカネボウの様です。フィクション小説というより、告白文に近い気がした。専門用語には必ず解説が付き、読者にわかりやすく著者の潔白を訴えている様な気もした。2018/09/02
ブラックジャケット
12
本書のモデルのカネボウに招かれた友人が「けっこう社員が多いんだよね、それも偉い人が」という感想を聞いたことがある。ずいぶん昔のことだが、日本を代表する名門企業の最期の断末魔を覗いてみたい、と怖いもの見たさが勝った。著者は財務経理担当の重役で、長年の粉飾決算を見続けた証人でもある。ノンフィクションではなく、小説仕立てに挑戦した。全貌を知る人だけに説得力あふれる筆致に、あの当時のあまたの沈没船が頭をよぎる。粉飾は永遠には続かない。精算する時を失い、名門企業の晩節を汚した。本書が在庫の山にならないように祈る。 2019/05/24