内容説明
金門島―。ここは、かつて人民解放軍と国民党軍の激戦の最前線であった。元商社員の藤堂は、“現代史が生んだ空白”であるその島で密貿易を行ない、したたかに生きていた。だが大学時代の友人が殺害され、血が血を呼ぶ狂騒曲が始まる。アジアのさまざまな病巣を露呈された事件の結末とは…。鄙びた観光地で、日本人と台湾人のカップルを襲った悲劇、「瑞芳霧雨情話」を併録。
著者等紹介
船戸与一[フナドヨイチ]
1944(昭和19)年、山口県生れ。早稲田大学法学部卒業。’85年『山猫の夏』で吉川英治文学新人賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。’89(平成元)年『伝説なき地』で日本推理作家協会賞を受賞。’92年『砂のクロニクル』で山本周五郎賞を受賞。2000年『虹の谷の五月』で直木賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Akihiro Nishio
22
標題作と短編の二本立て。金門島という中国と台湾の間で宙に浮いている島では、様々な犯罪組織が暗躍している。元商社マンの主人公はそうした輩と堂々とビジネスを展開しているのだが、大学の同級生、殆ど交流がなかった妻と息子が関わってくるうちに悲惨な展開へ。ビジネスを邪魔するなよ日本に住んでる日本人。この物語を通して中国人と台湾人の考え方、両国が守ろうとする面子、大戦時の日本人の関わり、マフィアビジネスのやり方などを知った。物語は架空だが描かれている状況は本当なんだとか。ホンマかいな。面白かったけど。2018/07/22
Bo-he-mian
11
船戸与一の小説はよく「冒険小説」と呼ばれるが、読んだ事がない人はインディ・ジョーンズみたいなのを想像しちゃうと思うし、それは実像とかなり違う(笑)。自分は、強いて云うなら「辺境小説」だと思う。この人は、日本が南米を「第三世界」とか呼んでいた頃から、自ら現地に赴き取材して、自分の目で見てきたものを元に小説を書いていた稀有な作家である。本作も、台湾と中国本土の間に浮かぶ、所有権があいまいな「金門島」という島に流れ着いた、脛に傷をもついかがわしい男たちの不法ビジネスとその末路を描いている。(コメント欄へ続く)2018/08/25
しんこい
9
金門島がこんなややこしい場所とはしりませんでした。そんな島で密貿易を行う主人公の周りの友人が殺され、隣の部屋の謎の男女は?、密輸にも邪魔が入りと事件が続きますが、主人公が快刀乱麻の活躍で解決する訳ではなく、結構達観した感じです。冒険小説ではないな。2015/05/20
KF
8
2015年の8月頃に読んだ記録がありました。 決して今月読んだわけではないのですが、月替わりにカウントすると足されてしまうんだろうな。 皆さん、要確認ですが、金門島は臺灣省ではありません。福建省です。 が、中共の植民地になる事なく、中華民國の正当な「國土」です。 が、中華民國は「省」という行政地区名称を使用していないんですかね、現実的には。
カワセミ440
5
金門島って、その存在は、それが中華民国だってこの本で知りました。あの強欲な?中共が台湾と係争保留中ってあの位置関係でどういうマジックなんだろう??この本でちょっとだけ分かった感じだな。台湾とか金門島そのうち一回くらい行ってみたいけど、配偶者は絶対に嫌だって。そこまで嫌うことは無いと思うけど。(中国本土とか反日半島と混同してるのかな)ちょっと古い船戸さんだけど、ホント面白い。この感じは船戸与一さんにしか描けないね。2016/10/03
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