新潮文庫
渡良瀬

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  • サイズ 文庫判/ページ数 528p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101342177
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

南條拓は一家で古河に移ってきた。緘黙症の長女、川崎病の長男の療養を考えてのことだった。技術に誇りを持っていた電気工の職を捨て、配電盤の製造工場で新たに勤めはじめた。慣れぬ仕事を一つずつ覚えていく。人間関係を一つずつ作っていく。懸命に根を張ろうとする拓だったが、妻との仲は冷え切っていた。圧倒的な文学的感動で私小説系文学の頂点と絶賛された最高傑作。伊藤整文学賞受賞。

著者等紹介

佐伯一麦[サエキカズミ]
1959(昭和34)年、宮城県仙台市生れ。仙台第一高校卒。雑誌記者、電気工など様々な職に就きながら、’84年「木を接ぐ」で「海燕」新人文学賞を受賞する。’90(平成2)年『ショート・サーキット』で野間文芸新人賞、’91年『ア・ルース・ボーイ』で三島賞、’97年『遠き山に日は落ちて』で木山捷平賞、2004年『鉄塔家族』で大佛賞、’07年『ノルゲNorge』で野間文芸賞、’14年『還れぬ家』で毎日芸術賞、『渡良瀬』で伊藤整賞を、それぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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だんぼ

287
「朝 弁当箱の入ったナップザックの重さを肩に感じバス停まで歩くとき 拓は弁当がいまの俺と幸子を結びつけている と思った」電気工 南條拓28 砂利道を靴底に感じ 不安定なまま でも これでいいと思う 渡良瀬に満たされる拓 ひたむきな拓   2023/08/26

Lara

76
佐伯一麦氏の私小説。元電気工、南條拓が、配電盤の制作に携わる。配電盤工事の作業が、一つ一つ丁寧に、細かく記述される。その度、何度か読むのを止めようかと思った程。妻・幸子、子供たち、優子、夏子、拓一に囲まれ、悩みもありながら人生は続いて行く。淡々と語られた日常だが、主人公のまじめさ、ひたむきさが印象に残る。2020/07/16

James Hayashi

32
伊藤整文学賞受賞作。初読み作家であるが、いくつもの賞を受賞されている。配電盤の描写であるが配電盤を知らない自分にも心地よいのである。「和風総本家」の職人の技術を見ているようでもあるが、若さゆえ未熟ゆえの不安を感じ取ってしまう。また家族の描写も安泰でなく(緘黙症、川崎病、冷めた夫婦仲)その不安定さが、整った配電盤との違いで浮きだって見える。90年代に未完成であったものを筆を入れ直しているらしいが、読み応えのある私小説であった。2019/02/09

fseigojp

23
進学高校卒業後は大学に入らず上京し、電気工として働きだす。訳アリ結婚でもうけた家族の厄介ことをも描き、かつ離婚後は草木染作家と再婚 後妻の北欧留学にもつきあい 帰ってきてからは 仙台で実家とは距離を保ちつつ暮らしつつ 実家の老親の痴呆も描く 2018/01/18

to boy

23
なんと感想を書いたらいいのか迷う一冊。電気工として働く主人公の日常が淡々と語られていく。何か事件が起こるのかという期待を見事に裏切って、日常の描写だけで終わってしまいました。仕事に対するこだわり、仲間への尊敬、確執。どうにもうまくいかない妻とのやりとりや、子供達との接し方など、ほんとに普通のどこにでもある日常がリアルに語られていて、ちょっと退屈なんだけどもう一度じっくり読み直したくなるような不思議な一冊。2017/12/15

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