内容説明
はじめて雨に会った日のことは、忘れられない。凍えそうに寒い、十二月の、雨の日だった。濃い栗色の巻き毛をした雨は、オスのアメリカン・コッカスパニエル。私たちは、よく一緒に音楽を聴いて、二人だけのみちたりた時間を過ごす。もちろん、散歩にも行くし、玩具で遊んだりもするけど。甘えたがりの愛犬との特別な日常や、過去の記憶を呼び覚ます音楽について、冴え冴えと綴った好エッセイ集。
著者等紹介
江國香織[エクニカオリ]
1964(昭和39)年東京生れ。短大国文科卒業後、アメリカに一年留学。’87年「草之丞の話」で「小さな童話」大賞、’89(平成元)年「409ラドクリフ」でフェミナ賞、’92年『こうばしい日々』で坪田譲治文学賞、『きらきらひかる』で紫式部文学賞、’99年『ぼくの小鳥ちゃん』で路傍の石文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、’04年『号泣する準備はできていた』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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❁かな❁
145
江國香織さんの作品を読むのは13作目。読メに登録するかなり前に読んだので感想はUPしてません^^;密かに未読の江國さん作品を挟んでいってます(笑)こちらは江國さんの愛犬の「雨」と音楽についてのエッセイ集*雨と江國さんの関係がとても良く、思い出の曲がたくさん語られています!YouTubeで検索して聴きながら読ませてもらいました!知ってる曲もあり、今、聴いても色褪せない名曲で懐かしく読書と音楽を楽しむことができ幸せなひとときでした♡シンプリーレッドやスウィングアウトシスターなど懐かしい〜♪とっても素敵な作品★2015/07/04
優希
85
江國さんの愛犬・雨と音楽についてのエッセイ集でした。「雨」は雨のことではないのに、雨の日のように思えてしまいます。雨と江國さんの関係がとても素敵で、そこに流れる音楽が心地よいものに感じられます。特別な日常や過去の記憶にある音楽。雨と音楽の自然体な雰囲気。音楽がある生活の中で雨と江國さんが寄り添っているのが凄く素敵です。言葉はなくてもゆったりとした時間の満ち足りた空気に心が豊かになりました。2015/07/14
のぶ
82
愛犬と音楽と日常生活を絡めたエッセイ集だが、まず、この融合しそうもない3つを絡めて、一冊のエッセイ集を出してしまう江國さんの発想が偉いと思った。愛犬の名前が「雨」と言うだけで妙に落ち着いた雰囲気にさせてくれる本だった。出てくる音楽に関しては、洋楽のポピュラーが中心で、自分は若いときに聞いていた、知っている曲に関しては懐かしく思ったが、それ以外には関心がいかなかったのは残念。いずれにせよ、江國さんの愛犬への愛情と、何気ない日常をうまく綴った好エッセイ集だった。2017/10/12
kinkin
59
江國香織さんの本には音楽がよく出てくる。その音楽の好みが私とよく似ているのでどの曲もほとんど知っている。彼女と雨と音楽の関係は音符に例えれば3連符というのかな。雨という名の犬は彼女の脇で静かに音楽に耳を傾けている様子がよくわかる。jazzの名曲「You and The Night and The Music」という曲がある。あなたと夜と音楽と。彼女の場合、彼女の場合は「あなたと雨と音楽と」になるのかな。 彼女のウェットな文体がとても好きだなー。2014/11/24
こきよ
59
犬と共に暮らした経験のある人なら、深く感情移入できる作品。江國さんの、雨への溢れんばかりの愛情が感じられますね。自身の聴いてきた音楽を、雨と共に聴き、何処か作家然としない日常と共に相変わらずの江國節で颯爽と(しかし何処か憂いをもたせて)綴られた一冊でした。2014/06/08