内容説明
デュークが死んだ。わたしのデュークが死んでしまった―。たまご料理と梨と落語が好きで、キスのうまい犬のデュークが死んだ翌日乗った電車で、わたしはハンサムな男の子に巡り合った…。出会いと分れの不思議な一日を綴った「デューク」。コンビニでバイトする大学生のクリスマスイブを描いた「とくべつな早朝」。デビュー作「桃子」を含む珠玉の21編を収録した待望の短編集。
著者等紹介
江國香織[エクニカオリ]
1964(昭和39)年東京生れ。’87年「草之丞の話」で「小さな童話」大賞、’89(平成元)年「409ラドクリフ」でフェミナ賞、’92年『こうばしい日々』で坪田譲治文学賞、『きらきらひかる』で紫式部文学賞、’99年『ぼくの小鳥ちゃん』で路傍の石文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、’04年『号泣する準備はできていた』で直木賞、’07年『がらくた』で島清恋愛文学賞、’10年『真昼なのに昏い部屋』で中央公論文芸賞、’12年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
657
「つめたいよるに」の9篇、「温かなお皿」の12篇と計21篇の掌編からなるが、デビュー作「桃子」を読める貴重な小品集。他のものも概ね初期に書かれたのではないかと思われる。さて、「桃子」だが、語りのスタイルと小説の構成は芥川の初期作品のそれを思わせるもの。また、漱石の『夢十夜』を想起させないでもない。前半のファンタジックな掌編もいいのだが、一見地味な後半のリアリズム小説も捨てがたい魅力がある。江國香織らしいと言えなくもないが、奔放さが制御されたなかなかの佳品揃いだ。前半では「デューク」、「夜の子どもたち」⇒2019/07/25
zero1
316
死は永遠の別れではなく、一本前の電車に乗っただけ。そう考えれば乗り越えられる。卵料理とアイスが好きだった「デューク」はそのことを教えてくれる。大丈夫、彼は虹の橋で飼い主を待っている。「びょおびょお泣く」など表現も独特。本書はデビュー作「桃子」を含む21の短編が収録された一冊。「いつか、ずっと昔」はヘビ、豚、貝だった前世が描かれており川上弘美の作品世界に近いか。短編は作家の才能を見るには最適な、小さな宇宙だ。無駄を省き、鋭く表現しているところは読む価値あり。何度でも再読したい。2018/11/29
三代目 びあだいまおう
298
江國香織さん作品にこれまで全く興味が湧きませんでした。先日読んだ別作家の作品で解説文を書いていた江國さんの文章、表現に『単に食わず嫌いかも』と思い、読友さまが本作を薦めて下さいました!各話10頁弱の超短編集。お薦めして下さった方の思いが伝わります。作者初心者にとって取っ掛かりやすく、読みやすく、作家の感性やセンスに一冊で幅広く触れられます!日常に潜む少しの不思議や小さな幸せを江國さんの感性で感じとり、言葉を選んで文章を紡ぐセンス❗短い文章でそんな様々を表現できるって凄い❗もう少し江國作品探そうかな‼️🙇2019/09/03
馨
217
短編集。前半はバラエティ豊かドラマ化出来そうな作品集。『デューク』は文句無し。飼い犬があんな形で最後に会いに来たら嬉しいだろうな。主人公の女性が歩んだ人生を振り返る『夏の少し前』、主人公が前世に戻っていく『いつか、ずっと昔』、主人公はおばあちゃんの生まれ変わり?な『スイートラバーズ』も良作。『鬼ばばあ』好きです。どこか懐かしく感じました。大人になれば覚えていない記憶かもしれないけど、幼少期年寄と仲良くすると色々学べて成長出来、死も身近に感じたりと大事だと思います。後半は食べ物絡みのお話。2022/07/16
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
206
愛しいから悲しくて、さびしいからいとしい。ひとりで立つ肌寒さを覚えているから幸せで、横のひとを慈しむ。「私、ずっとながいこと、こんな光景にあこがれていたような気がします」 こんな風に、愛せたらいい。こんな風に、生きれればいい。もの忘れがひどくても、また新しく恋をすればいい。死ぬときはひとりでも、幸せの記憶がこころを、からだを、あたためればいい。21種類の幸せと悲しみの欠片たちが、静かに心に寄り添ってくる。江國さんのお話の中で、いちばん好きかも。この人の話はいつも孤独の優しさと気高さを教えてくれる。2019/01/10