内容説明
ウィルミントンの町に秋がきて、僕は11歳になった。映画も野球も好きだけど、一番気になるのはガールフレンドのジルのことなんだ…。アメリカ育ちの大介の日常を鮮やかに綴った代表作「こうばしい日々」。結婚した姉のかつてのボーイフレンドに恋するみのりの、甘く切ない恋物語「綿菓子」。大人が失くした純粋な心を教えてくれる、素敵なボーイズ&ガールズを描く中編二編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
483
ウィルミントン(デラウェア州のだと思う)には行ったことがないけれど、なんだか自分自身がそこで過ごした少年の日々が懐かしいような気のする物語。11歳のダイがいい。彼はアメリカ育ち(国籍もアメリカ)で、自身のアイデンティティもアメリカにあるのだけれど、その実、日本の男の子そのものなのがまたいい。ウィルミントンの街の空気感、とりわけ秋の透明感が物語を一層爽やかに、また鮮やかに彩る。プロットはさほどに起伏があるわけではなく、11歳の少年のささやかな日常が描かれるのだが、その自然さこそが小説を形成するのである。2019/09/18
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
183
この人のタイトルのつけ方ってなんかもう、ずるい。ウィルミントンという町は行ったことないけど、ウィルミントンの秋はたしかにこうばしいし、海の風さえ日本とは違うよう。 結婚した姉の以前の恋人に恋するみのりの日々はあまく切ない「綿菓子」でしかないし。子どもの頃って、たしかにいろんなことを考えているんだけれど、こんな風におとなの世界は膜を張っているように遠いんだよなぁ。こんな風に不器用に愛を示されたらメロンは年に一回しか食べれないし、珈琲は何よりもあまくてしょっぱい飲みものになる。 これはなんともずるい小説です。2019/09/22
優希
119
面白かったです。とてもピュアなボーイズ&ガールズ。揺れる心を綺麗に切り取っていて、心にじんわりきます。甘酸っぱくてやらわかくてとろけそうな中編が2編。幼いけれどちゃんと恋してて、その様子が可愛らしかったです。ぎゅーっとなりました。2016/03/10
Willie the Wildcat
95
恋愛と結婚に垣間見る過程と経緯。模索する結婚観。両親、祖父母、姉などが模範であり、反面教師ともなる。友人の言動も評価軸に加わり、ぼんやり大人の世界を感じつつ、目の前の自分に向き合う。作品としては『綿菓子』の方が、印象的な件アリ。みのりが、いつもと違うみつまめを自然に頼んだところに成長を感じるかな。加えて、姉の誕生日のメロンに込められた家族愛。一方、何故に”綿菓子”なのかに頭を悩ます。涙で始まり、涙で終わる。甘くも溶けるか、儚く溶けるかは、心持次第。故の”綿菓子”也。2018/12/22
オリーブ子
93
再読。表題作と短編連作の2編。 「こうばしい日々」は黄色いスクールバスが似合いそうな、アメリカ国籍の日本人少年・ダイの話。ジルとの恋愛はまるで映画のよう。特にワールドシリーズのくだりや、寛大なアメリカ男についての話、文化の違い。パーネルさんとクーパーさんは、美しいシーン。 「綿菓子」は大学生に恋するちょっと大人びた小学生・みのりの話。おばあちゃん、お母さん、お姉ちゃんの恋愛に反発したり、意外に思ったり。オンナの成長過程に共感。絹子さんの話、ラストのコーヒーが好き。 少年と少女、それはまったく違う世界。2016/07/18