内容説明
731部隊の闇は戦後も続いていた。太平洋戦争中に生体解剖やペスト菌による非人道的な実験を行った細菌戦部隊。残虐な行為に手を染めながら、なぜ彼らは戦犯とならずに済んだのか。そこには隊長・石井四郎とGHQの驚くべき駆け引きがあった。戦後50余年を経て発見された石井の直筆ノート2冊から隠された真実を読み解く。国内外の圧倒的な取材から浮上した新しい戦後史。
目次
プロローグ 深い闇
第1部 加茂から満州へ(加茂;東郷部隊;平房の少年隊;ハルビンへの旅)
第2部 終戦そしてGHQ(「1945終戰当時メモ」;占領軍の進駐とサンダース中佐;トンプソン中佐の石井尋問;「ハットリ・ハウス」の検察官たち)
第3部 石井四郎ノートの解読(「終戰メモ1946」;鎌倉会議;若松町)
エピローグ 軍医たちのその後
著者等紹介
青木冨貴子[アオキフキコ]
1948(昭和23)年東京生れ。出版社勤務を経てフリーランス・ジャーナリストとなる。’84年渡米し、「ニューズウィーク日本版」ニューヨーク支局長を3年間務める。’87年作家のピート・ハミル氏と結婚(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
京都と医療と人権の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
148
731の深い闇に取り組んだ作品である。 石井四郎直筆のノートから始まる 過去の真実をめぐる物語… 731部隊が行なった おぞましい行為が蘇る。 本書の主軸は 石井四郎の生い立ち・ アメリカの思惑、731部隊員たちの 戦後が 主で、731部隊の 任務の詳細は 描かれていないが、 逆に 知らなかったことが 多く 新鮮に読める。2020/10/27
やいっち
93
力作。「太平洋戦争中に生体解剖やペスト菌による非人道的な実験を行った細菌戦部隊。残虐な行為に手を染めながら、なぜ彼らは戦犯とならずに済んだのか。そこには隊長・石井四郎とGHQの驚くべき駆け引きがあった。戦後50余年を経て発見された石井の直筆ノート2冊から隠された真実を読み解く。」2022/02/15
100
47
第二次大戦期に活動した細菌兵器を扱う731部隊の幹部が戦犯追及から逃れた過程が明らかにされている。そこに描かれている部隊長石井に後悔・自責の念は感じられず、所謂サイコパスの資質を持った者だったと想像する。社会に一定数はいるであろうそのような人間の暴走を許す社会構造だったことは大きな欠陥だろう。部隊幹部が免責になる過程を客観性を保ち丁寧に記したこの作品がもっと評価されてほしい。2020/09/13
読書ニスタ
40
満洲内に秘密裏に組織された731部隊を、指揮していた石井中将の戦後発見された2冊のノートを軸に話が進められていく。 多額の予算が与えられ、敗戦時には徹底的に破壊、隠ぺいが指示された以上、利用価値と倫理違反を明確に理解してやってた組織である。主だった幹部は戦後生き延び、薬害エイズにも関与したらしい。石井中将と米国は戦後、731部隊の情報で取引もしている。 本土が文字通り焼かれ、同胞が苦痛の中死んでいく間際にあって、細菌兵器を持たないという倫理観は、自分なら持ちえないと思う。2020/02/17
Willie the Wildcat
39
建前と本音。人道問題による国際法を唱えつつ、冷戦による”陣取り合戦”。司法取引の判断基準の妥当性とは如何に。人類の英知も使い方次第。信念をも変えざるを得ない時勢。石井氏と対照的な柄澤氏の戦後の苦悩と言動が印象的。一方、現代も続く諜報戦。如何に、我々1人1人が踊らされているかを感じざるを得ない。機密性vs.知る権利。歴史のみが妥当性を判断する現実。何かが違う気がしてならない・・・。2015/03/18