内容説明
海が大好きな島の少年章太と都会から来た少女佳代。それぞれ悩みを抱えながらもたくましく生きる子供たちの、心の成長を描いた表題作の他、個性的な担任教師と生徒たちとのふれあいをユーモラスに綴った『きみはダックス先生がきらいか』、人間のやさしさを五つの珠玉の物語の中に描く『ひとりぼっちの動物園』など、灰谷健次郎がすべての大人と子供に贈る感動の名作児童文学。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobody
17
私が灰谷健次郎を読むのは、ひらがなの絶妙な多さと改行空白の心地よさ、そして何よりも文章の滑らかさ。なのにそんな灰谷の文章にさえ小骨を感じてしまったら(それは私の精神状態の不調もあるだろうが)、もう読める本がなくなる。それにしても内容や主題が二の次という読書も虚ろなものだ。予定調和というか水戸黄門というか。敵を描くと描き方が批判されたから敵を出さなくなったようだ。そうするとまあ灰谷作品は普通の童話と変わらぬことになってしまう。信者を獲得してしまったらこっちのもの、あとは優しい世界でまったりと、というやつか。2020/07/02
sakadonohito
7
表題含む短編2つと「ひとりぼっちの動物園」という短編集収録されたもの。「ひとりぼっちの動物園」は単行本で既に読んでいたので再読はしたけどちょっと物足りなかった。安定の思いやりや優しさがあふれた作品群。2021/04/13
星野
5
古本屋にて。旅のお供にその2。灰谷先生の中編集。イメージしていたものとは違ったけれど、ライトで読みやすい。『きみはダックス先生がきらいか』が一番好き。2012/01/15
randa
4
児童文学でありながら、時折垣間見える、社会に対しての厳しい批判。本当に魅力ある人に光が当たりづらい現実。それでも、子どもは人のよさを見抜く天才だ。不条理な世界を見の当たりにしても、いのちといのちをぶつけ合い乗り越えようとする姿に感動する。2017/08/18
吉野
3
私はこの人の生きた時代を一緒に生きていたのに、どうして生きているうちに読まなかったのか、と思ってしまう。そんなことは実際読書には関係ないのだが、どうも損でもしたような、悔しい気持ちになるんだよな。ぎゅーっと心にしみた。さくらももこのもものかんづめを読んで、身内の死を悲しめなくてもいいんだと思って安心した。海になみだはいらないを読んで、血の繋がらない近所のおじいの死がこんなにも悲しい、関係性を素敵なことだと思った。この2冊を続けて読んだ読み合わせも、私にはきっと良かった。加藤登紀子の解説も好き。2020/10/10