出版社内容情報
水口 文乃[ミズグチ フミノ]
著・文・その他
内容説明
智恵子会いたい、話したい、無性に―。鹿児島県知覧にあった特攻隊の出撃基地。法曹の世界に進む希望を持ちながら、陸軍航空兵を志願した穴沢利夫少尉もそこから空に散った。知覧より婚約者・智恵子に宛てた手紙には、深い愛情と、そして無念の感情がほとばしっていた。戦後六十年以上を経て、婚約者が語り尽くした想い。一つの愛の形とあの時代の現実を追ったノンフィクション。
目次
第1章 出会い―図書館から戦場へ
第2章 覚悟―マフラーになりたい
第3章 婚約―たった一晩の子守唄
第4章 特攻―あなたを辿る旅
著者等紹介
水口文乃[ミズグチフミノ]
1972(昭和47)年、山形県生れ。明治学院大学社会学部卒業。出版社で週刊誌編集部勤務などを経たのち、フリーとなる。現在、取材活動をつづけながら月刊誌の編集にも携わっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
163
婚約者は『神鷲』「あなたの幸を希う以外に何物もない」「あなたは過去に生きるのではない」「今後は明るく朗らかに。自分も負けずに、朗らかに笑って征く」・・・・特攻隊員として散った穴沢利夫少尉。その婚約者・智恵子さんの書簡。智恵子さんのその後・・今年の8月は本作を手にした。沢山の穴沢さんがいただろう。沢山の智恵子さんがいただろう。残った人々が幸せな人生を歩まれていますようにと祈るだけの私だった。2022/08/10
やも
89
【再読】8月中に読もうと決めていた。戦時中の恋…死が身近にある時代。愛する人を、国を護るために青年は片道切符を手に飛んだ。男として吐けない本音は日記の中にだけ綴られる。「本が読みたい。音楽が聞きたい。会いたい、話したい、無性に___。」愛する人との未来が見えずに、一緒になる事を躊躇する苦悩。誰にでもあるような些細な幸せを求めることは、欲ではなく当たり前だと思う。過去よりも今と未来に生きてくれと願った彼の想い、その想いを受け止めた彼女。尊い気持ちに人の強さを見ると共に、今の時代と自分を省みる。2023/08/24
yomineko@ヴィタリにゃん
72
珍しく購入本です。愛し合いながらも恋人は特攻隊。出撃が迫る・・・なんでこんな事に!!!どれ程苦しかった事でしょう。家族、恋人、きょうだい、子供を置いて文字通り飛び立つ。帰っては来れない。めちゃくちゃな時代の無慈悲な作戦に飲み込まれていく穴吹さんと智恵子さんの余りにも悲惨な純愛物語。「人は時代を選ぶことは出来ない」との智恵子さんの言葉に、戦争のない時代に生まれた幸福を有難いと思う。穴吹さんの乗った飛行機に手に花を持って送り出す女子学生たちの写真が目に焼き付いて離れない・・・知覧特攻平和会館に行かなければ!!2020/09/09
黒瀬
49
『あなたのマフラーになりたい』 重いテーマでありながら実に淡々とした描写。しかしその陰で綿密で丹念な取材の形跡が読み取れる。1945年4月12日、桜の木の枝を振った女学生達に見送られて出撃する隼を写した写真があります。その機体に乗ったパイロットが穴澤少尉でした。2007年頃にテレビで特集されることの多かった知覧の特攻隊。本著はその中でも有名な穴澤少尉と婚約者だった智恵子さんにスポットを当てた話。いつ死ぬとも分からない穴澤少尉が遺して行く智恵子さんのことを想って悩みに悩んで下した決断。計り知れない重み…。2019/08/15
馨
42
穴沢少尉の智恵子さんを思う気持ち、最後まで思って散って往かれた気持ちが切なかったです。また智恵子さんも穴沢少尉のことをとても想われていたのに何もしてあげられなかった悔しさが残っている・・・戦争がなければ、普通にお付き合いをし普通に結婚をされていたお二人の真実のエピソードは他のどんな恋愛小説(泣けるような作られ方をしているもの)よりも涙が出ます。2012/07/07