出版社内容情報
北からの光線が射しこむ信濃追分のY邸。建築士・青瀬稔の最高傑作である。通じぬ電話に不審を抱き、この邸宅を訪れた青瀬は衝撃を受けた。引き渡し以降、ただの一度も住まれた形跡がないのだ。消息を絶った施主吉野の痕跡を追ううちに、日本を愛したドイツ人建築家ブルーノ・タウトの存在が浮かび上がってくる。ぶつかりあう魂。ふたつの悲劇。過去からの呼び声。横山秀夫作品史上、最も美しい謎。
内容説明
北からの光線が射しこむ信濃追分のY邸。建築士・青瀬稔の最高傑作である。通じぬ電話に不審を抱き、この邸宅を訪れた青瀬は衝撃を受けた。引き渡し以降、ただの一度も住まれた形跡がないのだ。消息を絶った施主吉野の痕跡を追ううちに、日本を愛したドイツ人建築家ブルーノ・タウトの存在が浮かび上がってくる。ぶつかりあう魂。ふたつの悲劇。過去からの呼び声。横山秀夫作品史上、最も美しい謎。
著者等紹介
横山秀夫[ヨコヤマヒデオ]
1957(昭和32)年、東京生れ。国際商科大学(現・東京国際大学)卒。上毛新聞社での12年間の記者生活を経て、作家として独立。’91(平成3)年、『ルパンの消息』がサントリーミステリー大賞佳作に選出される。’98年「陰の季節」で松本清張賞を受賞する。2000年、「動機」で日本推理作家協会賞を受賞。現在、最も注目されるミステリ作家のひとりである(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
299
主人公の境遇が俺とダブる部分が多くて、なかなか辛い読書だった。俺も前職は設計事務所勤めだったの。設計にかける彼の情熱。俺も昔はこうだったんだ。でもそれはキツイ仕事で23年目で燃え尽きた。病んだ。最後は大手顧客のネゴに独断で仕事を断わった。数ヶ月かけて打ち合わせして自分で仕上げた設計図を競合大手に無償で渡し、その上ご丁寧に説明会まで出向いた。設計意図を理解して欲しかった。若かった故の心意気だった。だからこの本の、最後の主人公の行動は俺には理解出来る。何とかこの作品を、形に出来れば、世に残せれば。その思いは。2024/09/04
イアン
228
★★★★★★★★☆☆『64』以来6年ぶりとなる横山秀夫の長編。建築士・青瀬が請われて設計した信濃追分のY邸。引渡し後に音信が途絶えたことを不審に思った青瀬が訪れると、そこに移住した形跡はなく…。施主一家はどこに消えたのか。唯一残された椅子が意味するものとは?殺人などの事件に頼らずともここまで純度の高いミステリを書けるのは流石。実在した建築家・タウトの来歴や建築に関する技術的な記述にやや冗長さを感じたものの、この部分に興味が持てれば更に楽しめる。燦々と降り注ぐ陽光ではないけれど、穏やかな温かみを感じる良作。2022/01/02
ALATA
189
「あなたが住みたい家を建ててください」建築を志す者にとってなんと魅力的な言葉だろう。青瀬の傑作「陽光と陰影が連動して時を刻む洋館」は誰一人住むことなく沈んでいた。ノースライト、ブルーノタウトの椅子、設計コンペ、過去の事故から浮かび上がる悲劇の連鎖。美しい謎が解明されていくいい感じの読み物でした★4※日本に滞在したドイツの建築家、頭の片隅にあったが学べて良かった※※作り込みすぎた家は住みづらい・・・耳の痛いお言葉です。2024/04/09
納間田 圭
175
建築家のあなた自身が、住んでみたい家を建てて欲しい。若手建築家が持てる力を全てを振るった…Y邸。場所は…信濃追分。あえて…陽の当たらない北側に設けた大きな窓。そこから浅間山を望める渋い設計。そして”平成すまい200選”なる出来栄え。しかし4か月経っても無人だった。中は家具はなく二階にあがると…窓の向こうの浅間山を望むように古ぼけた一脚の椅子だけ。その椅子こそが…キーとなるドイツの建築家ブルーノ・タウトの椅子。北向きの窓から差し込む柔らかな光のように迎える…優しく美しい結末。読了後は幸せな気分にさせてくれる2023/02/27
まさきち
139
自分が設計した家の建て主一家の失踪と、その家に唯一残されていたタウトの椅子の謎を中心に、非常に多くの話が盛り込まれていた一冊。そしてそれらが最後に見事回収されていたのには舌を巻きまき、大いに楽しめたのですが、少々盛り込みすぎて結末に辿り着くまで時間を要し、スピード感が失われてしまったように感じられたのは残念でした。2024/11/25