内容説明
舞踏家の父と暮らす朔は、物語を書くのが好きな十二歳。クラスの中で浮いた存在になることを恐れつつも、気の強い鹿山さんとの友情を深め、優しい田島君への憧れを抱きながら、少しずつ大人に近づいていた。だが、そんな朔の日常を突然切り裂くできごとが起こり―。私はきっと、なんらかの方法で戦わなくてはいけない。唐突に子供時代を終わらせられた少女が決意した復讐のかたちとは。
著者等紹介
島本理生[シマモトリオ]
1983(昭和58)年、東京生れ。’98(平成10)年、「ヨル」で「鳩よ!」掌編小説コンクール第二期10月号当選(年間MVP受賞)。2001年「シルエット」で群像新人文学賞優秀作を受賞。’03年「リトル・バイ・リトル」で野間文芸新人賞を受賞。’04年「生まれる森」、’06年「大きな熊が来る前に、おやすみ。」で芥川賞候補に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
155
ヤラレましたね〜、ボリュームの薄さとは裏腹に実は結構ヘヴィな内容、展開にガツンときました。12歳の女の子を主人公に思春期特有の悩みや葛藤を見事に島本さんテイストで仕上げてくれています。主人公の数少ない?友達「鹿山」さんがとても痛快でした。とにかく自分をしっかり持ってハッキリと物事を決めて、発言するそのキャラに本作はかなりの部分を救われているでしょうね。いつの時代も女の子は精神的にオトナでたくましいですよね。何気ないひとコマ、一風景が永遠の思い出になるステキでもあり、ある意味コワく強烈な内容の作品でした。2016/09/18
おしゃべりメガネ
141
4年ぶりの再読で、やはり改めて読んでも島本さんならではの、ちょっとダークな感じはしっかりと残ります。僅か二百頁にみたない作品なのに、こんなにも読後に強烈なインパクトを残してくれるとは、やはり彼女の世界観、作風はただ者ではないんだなと。12歳の女の子「朔」は舞踊を続ける父と二人で暮らしており、そこから様々な人間模様が展開されます。主人公の友達?となる「鹿山」さんのキャラは、裏表なく、ハッキリしてパンチあってやっぱり好きですね。読んで爽快とはならないかもしれませんが、不思議と読むのが止まらなくなる作品でした。2020/09/06
青蓮
85
島本さん3冊目。12歳って微妙な年齢だと感じました。大人ではないけれど、何も解らない程、無邪気な子供でもない。多感で難しい年頃の少女を巧みに描く島本さんの瑞々しい感性が素晴らしいと思います。鹿山さんが結構好きなキャラクターです。読み進めていくにつれ、佐倉には嫌悪感が…親切なふりをして朔の「子供」の部分につけこむ酷い大人だと思いました。2015/08/30
はつばあば
67
男の事が少しわかり、同性に対する冷めた目。子供でありながら大人の心を持つ年齢。男の人にはわからないだろうが、ちょっとしたことで女の子を壊してしまう事を。これが書かれたことで秘かに復讐ができたのじゃないかと。この子の言葉を代弁する理生さんの、思春期の痛々しくて繊細な物語を、12歳の子に読ませるだけの勇気を、子を持つ親に願う。本当に薄い本なのに地雷があった・・2016/10/30
も
56
なんか、一気に読んでしまったけれど、あまりにも脆い世界を描いていて性にあわない…。大人と子供のちょうど境界線にいる12歳の少女、お父さんと二人暮らしだけれど、心に寂しさを抱えている。すごい不安定な、ちょっとつついたらガラガラと崩れてしまいそうなバランスでどうにか保っている感じでした。むーん。2016/01/19
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