内容説明
落魄の半生を経て、貧窮と性病の果てに凍死した大正時代の私小説家・藤澤清造。その代表作「根津權現裏」に、真の同類を認めた衝撃から歿後弟子を名乗った著者。爾来、清造の偏見払拭と全集の刊行を生涯の務めと決意し、いつしか自身も時流に背いた私小説を書き出すに至った、「師弟」関係の始まりを含む関連エッセイを集成した。「なぜ清造だったのか」、その答えがここにある。
目次
『藤澤清造全集』編輯にあたって
藤澤清造略年譜
藤澤清造―自滅覚悟の一踊り
清造忌 雪に埋もれず―藤澤清造歿後七十年に
戯作者を目指した“文士道”
藤澤清造と故郷
どうで死ぬ身の一踊り
藤澤清造
「清造忌」を営んで
異端者の悲しみ―『稚兒殺し 倉田啓明譎作集』解説〔ほか〕
著者等紹介
西村賢太[ニシムラケンタ]
1967(昭和42)年東京都生れ。中卒。2007(平成19)年『暗渠の宿』で野間文芸新人賞、’11年「苦役列車」で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
36
☆☆☆★ 藤澤清造の没後弟子を自認し、生前自らの墓を藤澤清造の墓の隣に建てた西村賢太。今はあの世で師藤澤清造と酒でも酌み交わしているのか。ほとんどが藤澤清造に関わるエッセイ集。ついに藤澤清造全集を刊行出来ぬまま亡くなってしまった。しかしそれもまた彼らしいのかもしれない。2022/08/05
今ごろになって『虎に翼』を観ているおじさん・寺
34
大半は藤澤清造の話。話題が重複する為、読み進むと次第に藤澤さんに少し詳しくなる。高田文夫先生の解説が楽しい。2011/04/27
トンボ玉
21
自分が読書するのは単純に面白いから。映画も漫画も面白いけど、もしそれに原作があるならやはり自分の脳内イメージで作り上げた物語の方が断然面白い。西村が登場した時は下層労働してきた人間としての共感は有りましたが、随分捻くれた書き方に納得出来ませんでした。単純に言って面白くない。ただそれだけなんです。面白い物語が出て来たらゴロッと評価は変わります。ただ二十代にもはや藤澤清造の全集作りを考えていたとか、藤澤の墓の隣に自分の墓もあるとの記述を見ると「凄い」と唸らざるを得ません。2014/08/02
とら
20
これが西村賢太の随筆集ということで、私小説≒随筆やエッセイだと認識していた自分の考えは否定された。これは他の西村作品とはやはり少し違うと感じたからだった。私小説はやはり列記とした”作品”なのだなあと。しかし何だろうこの面白さは。ここまで一人の作家、作品に人生のいくらかを捧げる程没頭出来るものだろうか。自分の墓をその作家の隣に建てたり、少なくとも自分は出来ない。これはこれで才能だと思うのだった。お気に入りは途中の日記風のやつと、侃侃諤諤、あとは文壇をイジっている系、変態エピソードが良い。つまり全部良い。2017/11/29
ミサ
17
随筆集。藤澤清造への思いや失恋エピソードなど西村賢太の人柄を知れる内容が嬉しい。「四十を過ぎてなお未練に小説にしがみついている無能無名伸びしろゼロの五流新人。薄汚いほぼ無職の中卒男」って自分の事を卑下しすぎな所も滑稽で愛嬌があって好き。面白かった。2020/01/01
-
- 和書
- 身近なアリけんさくブック