内容説明
「私自身顧みて、罪万死に値する」国会でそう証言した元首相、竹下登。国のキングメーカーにまで登りつめ、今なおその残影は永田町を覆う。前妻の自殺、実父との確執、巧妙な錬金術、そして秘書たちの死…。にこやかな仮面の下に隠された彼の罪と業とは何か。出身地・島根で囁かれる「タブー」から疑惑の「皇民党事件」まで、ひとりの政治家の一生を辿りながら、日本社会の闇を抉る。
目次
第1章 暗く深き「業」
第2章 竹下グループの「手法」
第3章 野心と隠忍
第4章 パチンコと賭麻雀
第5章 秘書たちの悲劇
第6章 竹下王国の錬金術
第7章 皇民党事件の深層
第8章 闇の世界
著者等紹介
岩瀬達哉[イワセタツヤ]
1955(昭和30)年、和歌山県生まれ。’96(平成8)年、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」のスクープ賞、企画賞をダブル受賞。2000年には「新潮45」に掲載した本作品で、同賞の作品賞を受賞した
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感想・レビュー
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hatayan
45
昭和末期から平成初期に総理大臣を務めた政治家・竹下登の評伝。 首相への座を目前にして右翼の褒め殺しに遭った竹下は、暴力団に手打ちを依頼。親分の田中角栄に反旗を翻し派閥を結成して権力を手にします。寡黙で気配り上手ながら権力をなりふり構わず求める志向は、実父である舅との関係が原因で前妻を自殺で喪った過去がきっかけ。感情に走らず難局を堪え忍んだことで、政治家で位を極めるためにはどのような理不尽な現実でも受け入れ乗り越える意志を育んだとします。 典型的な利益誘導型とされる政治家の個人史をきめ細かに遡った労作です。2020/06/07
OjohmbonX
3
田中角栄を追い落とさなきゃ竹下登は首相になれなかったし、追い落としたことが1年での退陣の遠因になるという、二人の話というよりその構造を描く。就任→退陣に至る佐川事件の背景(右翼・やくざ・佐川急便・政治家の関係)から「その時点で仕方がなかった」って選択の重なりで起こる事態を、本書の後半で丁寧に見せていく。もっと大きな背景としては55年体制の固定化→ハックを試みる人(竹下)の出現→無理が出たってことかもしれない。システムハックは自分を徹底的に殺して制御することで成立していて、そこも生い立ち等から見せてくれる。2017/07/27
Yasutaka Nishimoto
2
おぼろげな記憶として残っているいちばん古い総理といえば福田赳夫なのだが、政治家として記憶にあるのは中曽根康弘あたりから。その後の中曽根裁定はテレビだか新聞だかにセンセーショナルにとりあげられていたような気はする。で、選ばれたのが竹下登で、なんか軽そうな人だという印象はあって、実際に任期の半分も果たせなかった。その期間を取り巻く出来事として、消費税導入、リクルート事件、東京佐川急便事件、褒め殺しなどあげるだけでもきりがない。薄れゆく記憶のすき間を埋めてくれる、特徴を捉えたわかりやすい本。内容は濃い。2020/07/25
nakanaka
2
だいぶ前に読んだのでまた読み返してみます。 印象としては、政治家としての力はさほどでもなかったが周囲への気配り等のコミュニケーション能力に長けていたのかなと。
midnightbluesky
2
山陰を知りたいなら、竹下と岩井志麻子
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