出版社内容情報
昭和41年春、大学生になった伸仁は部活動にアルバイトに青春を謳歌し、房江は兎我野町のホテルで賄い婦の仕事を得て働いている。別居の熊吾は進行する糖尿病に苦しみながらも、木俣の高級菓子の夢、中古車センターの運営、森井博美の活計等、大小様々な難事の解決に奔走していたのだが……。37年の時を経て紡がれた奇跡の大河小説圧倒的な感動のフィナーレ。
内容説明
昭和41年春、大学生になった伸仁は部活動にアルバイトに青春を謳歌し、房江は兎我野町のホテルで賄い婦の仕事を得て働いている。別居の熊吾は進行する糖尿病に苦しみながらも、木俣の高級菓子の夢、中古車センターの運営、森井博美の活計等、大小様々な難事の解決に奔走するのだが…。父母の劇的な人生を雄渾な筆致で描き、生の荘厳な輝きを捉えた奇跡の大河小説、圧倒的感動のフィナーレ。
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947(昭和22)年、兵庫県神戸市生れ。追手門学院大学文学部卒業。広告代理店勤務等を経て、’77年「泥の河」で太宰治賞を、翌年「螢川」で芥川賞を受賞。その後、結核のため2年ほどの療養生活を送るが、回復後、旺盛な執筆活動をすすめる。『優駿』(吉川英治文学賞)『約束の冬』(芸術選奨文部科学大臣賞)『骸骨ビルの庭』(司馬遼太郎賞)等著書多数。2010(平成22)年、紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
33 kouch
63
ホンギの熊吾への恩義。堅い絆。裏切りに苛まされる8巻と打って変わる9巻。過去の登場人物も次々と現れる。かと言って、ラストは皆に暖かく見守られる訳ではなく、生き方に相応しい豪快な死に様でもなく…なにか寂しげなものを感じた。どんな人でも結局はひっそりと死に、そこにまた次の新しい世界が生まれる。あとがきを読むと「野の春」にはそんな輪廻が込められているように感じた。長編だが読んで良かった。憧れ、勇気、虚無感、熊吾は色々なものを与えてくれた。生きる活力を与えてくれました。「何がどうしたって大したことはありゃせん」2024/09/27
まーみーよー
50
終わってしまった。感想を書くと余韻が断たれる気持ちになりそうでなかなか書く気にならない。昭和を生きた松坂家の20年を共有できて嬉しかった。伸仁の20歳の誕生日を家族で祝う場面とラストシーンは感涙。しばらく熊吾ロス房江ロスになるのがわかる。ノブちゃん(=宮本さん)には「春の夢」「青が散る」で再読すれば再開できそう。あー、良かったな。良質の読書体験でした。2023/06/14
reo
46
そもそも著者氏の自伝的大河小説「流転の海」を読む切っ掛けとなったのは、去年の九月中頃同氏の「灯台からの響き」を手に取ったところからはじまる。非常に洗練された文章に興を持ち、更に面白そうな本をと探していたらこの小説が目に止まった。何はともあれ全九巻読み終わり感想は❓と訊かれれば、一言”堪能させて頂きました”と。好きな本を三つ挙げろ言われれば「モンテ・クリスト伯」「レ・ミゼラブル」そしてこの「流転の海」がめでたく仲間入🙌松坂熊吾、房江、伸仁、丸尾千代麿他、この小説に登場してくる全員が生涯の友になりました。2022/01/05
Atsushi
35
読み終えてしまった。最終巻は松坂熊吾が濃密な生涯を終えるまで。精力的だった熊吾も古希を迎えた。溌溂とした房江と伸仁とは対照的に老いる姿が哀しかった。葬儀に駆け付けた善意の人たち。それぞれのエピソードを懐かしく思い出し胸が熱くなる。しばらくは熊吾ロス状態が続きそうだ。2024/06/09
西
33
ついに読み終えてしまった。NHKでたまたま見た宮本輝さんのこの作品完結時のインタビュー、あれに出会っていなかったら多分読んでいなかっただろう大長編。ラスト、悲しいけど、だからといって熊吾の人生が悲しいものだったわけではなく、たまたま最後の部分だけを切り取れば悲しかったものの、それ以上に幸せだった時間も多くて、人の幸か不幸かなんて、人生の途中でも決められないし、最後でも決められないし、どこを切り取るかで変わるものだから意味はないなと。虚構の世界、こんだけ長く味合わせてくれた作者に感謝しかない2021/05/17