出版社内容情報
一九二一年、ある無名の青年が広く知られる人物を殺害した。一代で財閥を作り上げた安田善次郎を襲った犯人の名は、朝日平吾。その衝撃は原敬首相暗殺の連鎖を生み、二・二六事件に至るテロリズムの世を招来する。彼は屈辱、怨恨、強い承認願望を抱いていたのではないか──。当時と現代に格差社会という共通項を見出す著者が、青年の挫折に満ちた半生を追ってゆく。『朝日平吾の鬱屈』改題。
内容説明
一九二一年、ある無名の青年が広く知られる人物を殺害した。一代で財閥を作り上げた安田善次郎を襲った犯人の名は、朝日平吾。その衝撃は原敬首相暗殺の連鎖を生み、二・二六事件に至るテロリズムの世を招来する。彼は屈辱、怨恨、強い承認願望を抱いていたのではないか―。当時と現代に格差社会という共通項を見出す著者が、青年の挫折に満ちた半生を追ってゆく。
著者等紹介
中島岳志[ナカジマタケシ]
1975(昭和50)年、大阪府生れ。大阪外国語大学でヒンディー語を専攻する。京都大学大学院博士課程修了。2005(平成17)年、『中村屋のボースインド独立運動と近代日本のアジア主義』で、大佛次郎論壇賞とアジア・太平洋賞大賞を受賞する。京都大学人文科学研究所研修員、ハーバード大学南アジア研究所客員研究員、北海道大学公共政策大学院准教授を経て、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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雲をみるひと
26
安田善次郎刺殺事件の犯人である朝日平吾の半生を追ったドキュメント。力作ではあるが、資料の少なさもあって少し深掘りに欠ける気がする。特に安田善次郎他資産家側の視点もあってよかったと思う。尚、復刻版に記載されてる昨年の元首相暗殺事件との関連性に関する見解はこじ付け感が否めない。2023/05/27
風に吹かれて
22
1921(大正10)年9月28日、安田財閥の創始者安田善次郎が朝日平吾によって暗殺された。朝日は暗殺直後に自決。このテロは、1か月後の11月4日に発生した中岡艮一18歳による首相原敬暗殺をはじめ、のちの浜口雄幸狙撃事件、血盟団事件などのテロ事件、5.15事件、2.26事件といったクーデター事件の引き金になったと言われている。それらは国家による国民の締め付けを強め、軍部の暴走が凄惨な歴史をつくることになったと捉えることもできる。 天皇の赤子である国民は、なぜ平等に幸福に過ごせないのか、 → 2023/07/05
CCC
7
大正期に起きた財閥創始者の暗殺事件を追っている。犯人の鬱屈感をもって現代の秋葉原通り魔事件や安倍晋三銃撃事件と重ね合わせていたが、そこは各人の差を無視した強引さも感じた。ただそうした主張はさておき、事件の犯人の半生はしっかり書かれている。犯行後の言論界の反応の部分は興味深く読めた。2024/01/06
Jun Masuno
3
タイトルにひかれ読む 安田財閥創始者の暗殺事件を起こした人物を主人公に、半生となぜ起こしたのか、原因を探っていく 自己評価が肥大しすぎて、うまくいかないのはすべて世間、他人のせいにする主人公 共感できるところは全くなくて、読後感もあまりよろしくなく ただこのような人物がこれから多数出てきそうで怖い2023/07/27
AppleSugar
2
現代と戦前の類似点については、最近の識者が警鐘を鳴らしている論をよく見るようになった。そうやって考えると、のちの血盟団事件から二・二六事件に繋がるテロの流れの原点とも言える、この安田善次郎殺害事件と、安倍元首相殺害は新たなテロの時代の始まりという意味で、重なってしまうでは、という恐怖がある。 朝日平吾のような精神構造を持った若者はいつの時代にもいただろうが、それが若者が疎外感や格差を感じやすい時代背景と交差すると、こういったテロの時代が現出する。 他人事にも思えないし、これから起こりうることにも戦慄する。2023/05/21