新潮文庫<br> 夢見通りの人々

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新潮文庫
夢見通りの人々

  • 宮本 輝【著】
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  • サイズ 文庫判/ページ数 284p/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784101307053
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

その名前とはうらはらに、夢見通りの住人たちは、ひと癖もふた癖もある。ホモと噂されているカメラ屋の若い主人。美男のバーテンしか雇わないスナックのママ。性欲を持て余している肉屋の兄弟…。そんな彼らに詩人志望の春太と彼が思いを寄せる美容師の光子を配し、めいめいの秘められた情熱と、彼らがふと垣間見せる愛と孤独の表情を描いて忘れがたい印象を残すオムニバス長編。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ろくせい@やまもとかねよし

206
夢見通り商店街に集う人々の10の物語。登場人物の自己は荒んだ利己に満ちている。しかし、それは「心を言葉で尽くすことが不可能」なため。荒んで見える利己は他者からの施しで支えられていると。人生を変える決意をさせた9つの施しは「入れ歯の洗浄」「偽装盗み癖」「淫乱の是認」「盲信を裏切らない詐欺」「刺青を取り除けとの進言」「アイスクリームの騙し取り」「顔の痣を隠す化粧の侮辱」「嘘と本心が入り組む手紙」「必要最小限の回答」。これらは世間の範疇を越す。しかし当人らにとっては掛け替えのない大切な唯一無二な行為だと表す。2020/05/31

ykmmr (^_^)

128
輝さん連作短編集。大阪の中にある『○○通り』を舞台に、散りばめられた様々な人間関係と物語を集めている。その場所の至るところで『喜怒哀楽』の感情が動いているのはいうまでもないが、正直、「うだつの上がらない」人たちの生活や人生も上手く組み込まれている。輝さんお得意の心理描写が生かされ、悲哀こもごも読者に与える。決して代表作・派手な作品ではないと思うが、輝さんが描きたい事がしっかり書かれている。人に対して表立てや噂だけを信じるのではなく、自分自身で相手と接して相手を知るという事が、大切だと気づかせてくれる。2022/01/07

ケイ

111
ある商店街の珈琲店の話とか結構色々とあるけれども、宮本輝さんのこの小説あたりがはしりじゃないかしら。もっとも、この小説の書かれた時期の日本、バブルに入る前、東京オリンピックより前かな、その頃の熱さのようなものがある。「夢見通り」の人々の血は、ドクドクと流れている。時に瀉血しなくちゃいけないんじゃないかと思うほどに。不穏とかいう言葉は合わず。狂乱や狂騒とも違うな。やはり熱い血、生命力かな。2024/03/12

takaichiro

108
大阪の小さな商店街を舞台に個性豊かなキャラクターが織り成す人間模様を、テンポ良い関西弁で描いた輝さん作品。約280頁を10章小分けにしてオムニバスリレー形式で繋ぎ、濃いめのキャラクターが主役になったり、バイプレイヤーを務めたり。老若男女それぞれの生い立ちや夢見通り商店街に住み着いた経緯、近所付き合いや確執、恋愛事情が少しずつ明らかに。読み進めるうちに、様々な形のブロックが積み上げられ、全体の姿が変わり、人間同士の成長や労りの形に見えてくる。輝さんに初めて触れるなら、ここをスタートにするといいのかも。2019/09/07

遥かなる想い

107
私の中では本書の評価は高い。短編集でありながら、微妙に繋がっており、語り手の宮本輝の凄さが出ている。2010/05/09

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