内容説明
浅野内匠頭夫人、阿久利。内匠頭の切腹後、落飾して瑤泉院と号したこの女性こそが、大石内蔵助を陰で支え、赤穂四十七士の吉良邸討入りの絵図を描いていた―。阿久利と内蔵助の淡い交情、幕閣最高権力者・柳沢吉保との知恵を尽くした探り合い。後に「美貌御前」と称された才色兼備のヒロインを軸に、膨大な資料を縦横無尽に駆使して誕生した、静かな感動溢れる出色の忠臣蔵小説。
著者等紹介
湯川裕光[ユカワヒロミツ]
1950(昭和25)年、東京生まれ。東京大学を一旦中退した後、法学部卒業、ハーバード大学大学院修了。民間シンクタンクなどに勤務後、独立して著述・評論活動等に従事、政治にもたずさわる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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goro@一箱古本市5/5
49
年に何冊か出逢える面白すぎる本の一冊!数多の作家が「忠臣蔵」に挑んでるしもう出尽くしてる感があるけど、没入、感動、明日にも泉岳寺にお参りに行かなければならにのではないかとその気にさせてくれる。内匠頭の妻、阿久里と大石内蔵助の二人が幕府に挑んだ闘いを克明にそして物語として昇華して飽きさせない至福の700頁でありました。私の中の「討ち入り」はこの本で決まりです。登録者数が少ないわ!もっと多くの人に読んで欲しい極め付きの本!時代小説が好きならマストです。2023/02/12
優希
44
静かな忠臣蔵でした。史実とフィクションが違和感なく混じりあい、今までにない忠臣蔵が生まれたと言っていいでしょう。ヒロインを軸にしているのも興味深い視点です。2022/04/09
藤枝梅安
8
この小説は赤穂浅野家の筆頭家老大石内蔵助が亡君後室・瑤泉院(阿久利)に支えられながら吉良上野介を討ち果たすまでを、詳細に描いたものである。 膨大な史料を駆使しつつ物語としての面白さも充分に併せ持った作品で、 阿久利の異母妹や、内匠頭側室の候補だった喜世(後の家宣側室・左京の方)、柳沢吉保、紀伊国屋文左衛門などが登場し、それぞれにこの仇討ちに関わりを持っていたことを巧みに織り込み、フィクションの部分にも細かな隠し味を散らしている。 また当時の幕府の体制や武家社会の自己矛盾をも描いている。 2010/02/05
ann
4
阿久利(後の瑤泉院)と柳沢吉保に焦点を当てて書かれていて、いろいろな目線から研究されて書かれているな、と。数多の忠臣蔵本の中からこの本を選べて良かった。12月になると引っ張りだしてきて何度も読んでます。
青メダカ
3
大佛次郎の「赤穂浪士」、池宮彰一郎の「四十七人の刺客」にも勝るとも劣らない忠臣蔵小説。多数の史料を緻密に分析したこれまでにない解釈。その上に文学的にも魅力のある秀逸な物語に感服した。2021/02/18