内容説明
昭和二十五年夏。十一歳の亮平は孤児の施設「めぐみ園」に放り込まれた。母親の心ない仕打ちや妹との突然の別れ。情けなさも辛さも悔し涙も、歯を食いしばって乗り越え、亮平は生来の明るさと要領のよさで生き抜いていく。園長夫妻の理不尽な扱いやその息子の暴力にも正義感で立ち向かい、保母や先生にも愛されるのだが、思わぬ岐路が…。作家としての原風景を描き万感こもる自伝的長編。
著者等紹介
高杉良[タカスギリョウ]
1939(昭和14)年、東京生れ。化学専門紙記者、編集長を経て、’75年「虚構の城」で作家デビュー。以来、経済界全般にわたって材を得て、綿密な取材に裏打ちされた問題作、話題作を次々に発表している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しいたけ
89
昭和25年、11歳で児童養護施設に入れられた高杉良(小説内では亮平)の自伝。細かな記憶の描写に読むのがとてもつらかった。施設探しで伯母と行った施設も入所したこの施設も、後に施設内虐待で世間を震撼させた。特に亮平も酷い目にあわされた当時の園長の次男は「恩寵園事件」で2000年以降実刑となっている。残虐な拷問や性暴力が昔から繰り返されていたのにも関わらず、介入できず被害者を増やしてしまったことに憤りを覚える。だが入所した子どもを何よりも大切にした施設が多かったことを、施設関係者としては知っていて欲しいと願う。2020/09/12
あすなろ
68
ここは児童養護施設なのです。つまり孤児院です。孤児同然の扱いを少年時代受けたという高杉氏。解説にもあるが、氏のこれまでの生き様の原動力と戦後の孤児院の情景を知り得た。但し、手厳しい事を以降述べれば、それのみである。また、非常に読み辛い文章であった。解説については、今迄、折に触れて高杉氏の作品に触れて来た者や経済小説を読む者にとり興味深いものであった。2020/09/13
優希
44
著者の自伝的小説なのですね。孤児の施設に入れられた亮平が何事にも屈せず、自力で乗り切っている様子が強い子なんだと思わされます。明るさと容量の良さを持ち合わせているのですね、正義感の強さで立ち向かう姿が格好良かったです。面白かったです。最後が尻切れとんぽのようだったのが残念でした。2022/07/17
軟水
5
戦後昭和25年(西暦1950年)、著者である高杉良の少年時代を基にした自伝的小説。 慣れない言葉が多くて読むのに苦戦した。2010年にフジで放送された三谷幸喜脚本のドラマ「わがやの歴史」を思い出した。映像向きだと思う。 読み進めていくうちに気づいたけどこれ著者の武勇伝じゃないかな…(笑)2024/04/17
流石全次郎
4
作家高杉良の自伝的長編と文庫版カバーに記されている。家庭の事情で4人兄弟全員が施設に入所。そこでの生活と主人公に対する周囲の人々の支え。自分の考えで行動する少年の物語でした。2020/09/12