新潮文庫
わたしたちに許された特別な時間の終わり

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  • サイズ 文庫判/ページ数 184p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784101296715
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

ブッシュがイラクに宣告した「タイムアウト」が迫る頃、偶然知り合った男女が、渋谷のラブホテルであてどない時を過ごす「三月の5日間」。疲れ切ったフリーター夫婦に忍び寄る崩壊の予兆と無力感を、横たわる妻の饒舌な内面を通して描く「わたしの場所の複数」。人気劇団チェルフィッチュを率いる演劇界の新鋭が放つ、真に新しい初めての小説。第2回大江健三郎賞受賞作。

著者等紹介

岡田利規[オカダトシキ]
1973(昭和48)年横浜生れ。’97(平成9)年にソロ・ユニット「チェルフィッチュ」を旗揚げ。2005年「三月の5日間」で第49回岸田國士戯曲賞を受賞。’07年、同作を小説化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

恭子

25
又吉直樹の「第2図書係補佐」で紹介されていて、読みたかった本。文章の構成が新しい、と言われているけれど、心地よくするすると読めた。「三月の5日間」がとても好き。2003年の3月、私は就職活動中で、自分はどんな人間で、これからどんな風に生きたいのかを真剣に考えたり、たぶんそれまでの人生で初めての挫折を感じたりするのに忙しく、戦争が始まったことは知っていたはずだけれど、それに対して何を思ったのか、全く覚えていない。「歴史とリンクしてるじゃんウチら」みたいなエピソードを持たないことを少し寂しく思った。2016/07/06

sweetsnow

20
現代日本文学の真髄が此処に。海外で起こっている戦争と眼前のセックスを同一視する男女。フリーター夫婦のあいだに流れる緩慢な絶望や閉塞感。これらは「現代」の「日本」の「若者」の実情を過不足なく描き示している。この小説を支えているのは、諄いまでに繰り返される精緻な意識描写であり、精密な場面描写だ。そして、それらが全てを俯瞰した第一人称という矛盾の視線から綴られることによって、「個人」を語りながら「社会」を語るという不可能性を可能にしている。2003年3月20日――貴方はどこでなにをしていたか覚えているだろうか?2010/10/05

深夜

16
どんな特別な場所や時間にも必ず終わりが訪れるということ。曖昧な会話や定まらない視点に、読者はふと、自分を取り巻く特別が終わりつつあることに焦りを覚え始める。雪崩の如く溢れる内面描写・情景描写が実に光っている。なぜ初対面の男女は、ままならない思いを抱えたまま五日間もラブホテルに籠ったのか。なぜ妻は時空を超え、まだ夫に出会う前の自分を見つめていたのか。読むほどに謎が深まっていく。2017/01/09

Bartleby

15
高橋さんきっかけで読んだ本。イラク戦争が始まるという時に、パフォーマンスで出会った2人が5日間ラブホテルにこもり、世の中の時間と断絶することで「歴史とリンクしてる」という感覚を得る。これを読んで、僕は逆に現代の日常を過ごしながらその感覚を得ることがいかに難しいことなのかを感じた。その難しさは去年被災地から離れた場所でテレビの報道を見続けながら感じていたものに近いと思う。2012/06/22

ソングライン

13
イラク戦争に反対する演劇を見終わった、見知らぬ若い男女が、渋谷のラブホテルに向かい5日間セックスをし続ける「三月の5日間」、そこには政治的主張があるわけではなく、現実感のない戦争、無力感の漂う日本の都会が同時に存在する違和感が描かれます。「わたしの場所の複数」では、バイトをサボったフリーター夫婦の妻が、夫への失いかけた愛、偶然に見つけたクレーム処理の電話対応をする女性のブログについて、語り続けます。興味のない話題に次第に惹かれていく不思議な世界です。2020/10/08

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