内容説明
浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など―日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。
著者等紹介
向田邦子[ムコウダクニコ]
1929‐1981。1929(昭和4)年、東京生れ。実践女子専門学校(現実践女子大学)卒。人気TV番組「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」など数多くの脚本を執筆する。’80年『思い出トランプ』に収録の「花の名前」他2作で直木賞受賞。著書に『父の詫び状』『男どき女どき』など。’81年8月22日、台湾旅行中、飛行機事故で死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
357
『浮気は今までにも覚えがあるが、部下とこうなったのは始めてである』。1980年に第83回直木賞を受賞した3つの短編を含む13の短編が収録されたこの作品。そこには1980年という時代の空気感が自然と醸し出される物語の姿がありました。さまざまな場面設定の物語に人の息吹を感じるこの作品。そんな登場人物たちの思いが今の世を生きる我々と変わらない、いつの世も変わらぬ人の普遍的な感情を綴るこの作品。実に累計200万部を売り上げたという物語の中に、40年前にこの作品を手にした人たちの思いを感じもする、そんな作品でした。2024/10/02
ehirano1
347
「犬小屋」について。ホンワカした話と思いきや、終盤に斜め上の展開で暗転しますが読後感は決して悪くはなく、ノスタルジックな思いでエンディングを迎えます。「想い」は「重い」のでなかなか時間が掛かるものですね。2023/07/02
ykmmr (^_^)
266
向田さん初読。『思い出トランプ』と言う、綺麗&ハッピーな中身を連想させるが、実は中身はダーク。人間の醜さ・儚さ・正直さ・ダークさを描いているのだが、その内容は重層で、人間の闇・らしさそのものなのに、それを颯爽とささっと、ある意味爽やかに書いていて、中々読みやすい。ストーリーの作り方も上手く、色々な展開が楽しめる。人間は、『誠実』に生きようとしているが、実は何処か『正直』にも生きているんだよね。まあ、時代が『昭和』なのは仕方ない。その時代に書かれたし。私を含めて、『昭和』の生活をあまり知らない人もいるし。2022/01/20
kinkin
225
携帯もネットもなかった時代、でもそれなりに幸せだった昭和を丁寧に切り取った短編の数々は、何度でも読み返すことができる。 2013/02/07
masa@レビューお休み中
220
人生はまるでトランプのようだ。劇的な大逆転があったり、手札通りの手堅い人生があったり、引いてしまったジョーカーを手放せずにいたりすることがある。向田邦子の鋭利で怜悧な人間の機微を描いた13篇の物語は、読むほどにひたひたと怖さが募っていく。脳卒中で倒れた宅二と、その世話をする妻の厚子の一日を描いた『かわうそ』。社長である庄治が、就職の面接に来たトヨ子にマンションをあてがった様子を描いた『だらだら坂』。どの物語も不穏な出だしではじまり、不穏な状態のまま収束していく。人生とは所詮そんなものといわんばかりに…。2015/05/30
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