内容説明
少女期を姉妹同様に過したが、いずれ芸妓となる身の上だった四人の女。満州の開拓団で苦楽を共にした小学生たち。さまざまな出会いと別れ。再会の歓び、歳月の哀しみ。故郷・土佐への想いは常に熱く。エジプトのみだらの蛇と呼ばれた女への憧憬はさらに強く。そして、何げない暮しの一齣からも濃やかにつづられる、人生の豊かさ。作家であり主婦である、宮尾登美子の「生活と意見」。
目次
めんきち
長唄
目
鰹のたたき
余暇
花の十二カ月
一時の女性のぜいたく
安産腹帯―十七歳のとき
マッサージ機
こんにゃく茶屋〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
59
軽めのエッセイを読みたくて手に取った作品。そう言えば宮尾さん、つい最近亡くなったんだっけ。彼女の作品もずいぶんたくさん読んだなぁ、でもエッセイは初めてかも。宮尾さんも満州からの引き揚げ組だとは知らなかった。長いこと恥じていらしてたらしい生家のお話、今で言うパニック障害(?)を抱えていたこと、大好きな着物のお話などなどファン必読の心の内が読めました。それにしても昭和はどんどん遠のきますなぁ。2015/03/01
ライム
3
長編小説内でモデルになった人達に会いに行く話が印象的。中国でともに難民収容所暮らしをした子供らに、40年後の再会が叶ったときの「天の与え給う潮時」との言葉に感心。一方、実家の商売の芸妓修行に来てた女達との再会は、かなり後ろめたい。まだその世界から足を洗えてなかったり、身体が不自由になってしまったりと不幸な境遇…それを目の当たりにしても作品に書いてしまえる、著者の言う作家の書く覚悟って、本当に凄いものなんだなと思う。2023/06/03
コルネリア
2
「寒椿」のモデルになった女性達についての文章が良かった。2012/12/07
norinori
1
職場の書架から。17歳で結婚したこと、満州からボロボロになって引き上げてきたこと、賞をとった後もなかなか売れず、文藝春秋の文の字を見ただけで涙をこぼしたこと…などなど、数ページずつのエッセイ集ながら、宮尾登美子という女性の人生の厚みが感じられる一冊だった。「昔は良かった」という感傷は好まないけれど、土佐での生活や、死別した人との思い出を振り返るのを読むにつけ、確かに失われてしまった美しさや豊かさというものはあるのだな、とも感じた。2020/02/01
一柳すず子
1
小説は読むのに結構体力がいるので軽めのエッセイにした。土佐への愛着、今では貴重な証言でもある大陸引き揚げの辛苦、興味の赴くままに書き連ねた文章は背筋がピンと伸びた清々しさがある。古き良き昭和の香り。2016/01/24