出版社内容情報
平野 啓一郎[ヒラノ ケイイチロウ]
著・文・その他
内容説明
錬金術の秘蹟、金色に輝く両性具有者、崩れゆく中世キリスト教世界を貫く異界の光…。華麗な筆致と壮大な文学的探求で、芥川賞を当時最年少受賞した衝撃のデビュー作「日蝕」。明治三十年の奈良十津川村。蛇毒を逃れ、運命の女に魅入られた青年詩人の胡蝶の夢の如き一瞬を、典雅な文体で描く「一月物語」。閉塞する現代文学を揺るがした二作品を収録し、平成の文学的事件を刻む。
著者等紹介
平野啓一郎[ヒラノケイイチロウ]
1975(昭和50)年、愛知県生れ。京都大学法学部卒。’99(平成11)年、大学在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あちゃくん
86
難解な文体に難儀したけど、文学を読んだなぁという満足感がありました。2015/12/29
優希
52
擬古文が美しいのが印象的です。宗教と神話、幻想の世界が光のように感じました。一瞬しか見えないものを詩のような語りで紡ぐのが心地良く、現実から離れたような世界に酔いました。2021/08/23
クプクプ
46
「日蝕」は私はヨーロッパへ行ったことがないので正確にはわかりませんが、解説によると著者が古いヨーロッパの言葉を漢字で書いてルビを駆使して成功した作品だそうです。文章は美しく整っていました。「一月物語(いちげつ)」は真拆(まさき)という25才の詩人が旅をして幻の女性を愛すという素晴らしく面白い物語でした。関西を旅したのですが、実際の地名が書かれていて、そこに恐い物語を重ねたので、いい化学反応が起こって成功していました。私も若い頃よく昆虫採集の旅をしましたが頭の中は好きな女性を考えていたので心理はわかりました2019/09/07
かみぶくろ
45
4.3/5.0 天才作家様の現世降臨作。新人のデビュー作としてずば抜けまくってると思いますね。これを持ち込まれた新潮編集者の驚きたるやですね。衒学的な擬古文調で書かれてるのに、めちゃくちゃ引き込まれます。読者と対話しているような文章に感じます。それしかないと思えるような正確で充実した表現が無限に連なっていくのも心地良く、場面(特に日蝕の)の劇的な描写も圧巻でした。どうやって勉強してるんでしょうね。いや、すごいっす。2024/08/11
ころこ
44
『日蝕』ヨーロッパ中世を明治の文体で翻訳調にしている。ペダンティズムに読者が誤魔化されるだけで、日本語を通過している以上この文体に必然性が無い。雰囲気を出しているだけ。『一月物語』日本及び中国のことなので、文体が迷宮を表象していることに必然性があると思わせるところがある。漱石の『三四郎』と『虞美人草』を足してみたような印象がある。作者の批判者が言うのは、要するに文学のコスプレをしているということだろう。文学の継承や復活について、文学の「図」を信じていて、「地」が分かっていないのではないかという疑惑が湧く。2023/12/02