内容説明
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サム・ミイラ
954
いやもう一話目からぶっ飛んでいる。ラスト一行の凄まじい破壊力。嫌な気持ちに顔をしかめながらもつい声に出して大笑い。ブラックジョークはかくあるべし!的な傑作。全てお金持ちの令嬢と召使いの物語。レトロ感満載でいったいいつの話だとも思うがそれも不思議な感覚に彩りを添える趣向。その衝撃は「玉野五十鈴の誉れ」でピークを迎え羊たちの晩餐で静かに幕をおろす。実に緻密に計算されたとても恐ろしくダークで爽快な短編集である。そして読者は必ずやメデュース号の筏とアミルスタン羊を検索する事になるであろう(笑)2016/05/01
青乃108号
923
【バベルの会】なる読書倶楽部に集う名家の娘と使用人。それぞれの家中を見舞う惨劇を描く短編5話からなる短編集。似た様な舞台で似た様な人物達が演じる各話はどれも似た様な印象を残す。さすがに一気に読むのはしんどかった。1日1話ずつ読むのが精一杯。こちらにも不幸がうつりそうな、新年一冊目に読まなくて良かったと思った本。2021/12/28
yoshida
700
「満願」で引き込まれた米澤穂信さん。「満願」が気に入ったならと読友さん達に紹介頂いた作品。名家の女性が集う読書サークル「バベルの会」。そこに加入し、また除名された者達の短編集。何と言うのだろう、肌が粟立つような、背筋が震えるような面白さ。「玉野五十鈴の誉れ」の最後の唄に絶句する。「身内に不幸がありまして」のラスト数ページにおののく。「北の館の罪人」の鮮やかな絵画の訳に驚愕する。「山荘秘聞」の淡々とした恐ろしさ。私はこの罪深さ、残酷さ、ほの暗さに惹き付けられて止まない。この作品に、深い闇の輝きを見た。傑作。2017/08/20
カメ吉
603
この作品は異様な重さの感じる短編集。『バベルの会』と云う読書サークルで繋がってはいるけど各作品にはそれぞれの悪意があって吐き気がする感じでした。だいたい時代錯誤な設定が多くいつの時代?って思いました。この作者の作品?意外でした。2016/05/26
Apple
547
どの短編でも終盤に恐ろしい事態がおこるわけですが、そこに至るまでの前振りや伏線がとても丹念で、かつユニークな要素や悲しさも併せ持っています。ひとつひとつが面白いだけでなく、ミステリアスな読書会という一本の繋がりがあって、作者が巧妙な仕掛けを施しているのを感じます。(具体的にどこが、というのは一回読んだだけの僕ははっきりとは言えません・・・) 未読の方は是非このぞくっとするタイトル回収をご覧いただきたいと思います。2021/06/19