内容説明
幕が下りるその前に見るべきものは、やはり見ておきたい。歴史作家は故郷を離れ、古都・京都に仕事場を構えた―。先斗町のウオッカバーで津田三蔵の幻を追い、西本願寺の“司馬さんのソファ”に新撰組の気配を感じ、四条河原町のレトロな喫茶店で本能寺の変に思いを馳せる。現代人の失くした信念、一途、そして命の尊さを描き続けた著者が遺した、軽妙洒脱、千思万考、珠玉の随筆68篇。
目次
薪能
ゾシマ長老と法然
尾崎放哉が見た京の空
比叡山
たまきはる
大徳寺
浮舟
鞍馬天狗
ウオッカバーにて
首陽の蕨〔ほか〕
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951-2017。北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て2005(平成17)年『乾山晩愁』で歴史文学賞を受賞し、作家デビュー。’07年『銀漢の賦』で松本清張賞を、’12年『蜩ノ記』で直木賞を、’16年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で司馬遼太郎賞を受賞。「地方の視点から歴史を描く」を信条に、精力的に作品を執筆した作品多数。『蜩ノ記』『散り椿』は映画化された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
91
葉室さんが亡くなられる前に九州から京都に移住して、その京都の町の思いをつづったものです。時代小説に出てくる人物にゆかりの町やさまざまな食べ物(小説などに出てくるものなども)についての話もあります。私も京都は好きなのですが最近の外国人の闊歩しているさまを見るとやはり足が遠のきます。2024/01/18
じいじ
71
葉室麟の作品は14作目ですが、随筆は勿論初読みです。執筆拠点を京都に移したのは2015年2月で、亡くなるまでの2年間余が綴られている。1篇が5・6頁なのは少々物足りなさを覚えるが、さすが歴史小説の葉室麟なので京都の情況にも詳しくて面白い。随所で葉室麟らしい鋭い切れ味を見せてくれます。曰く「お茶は苦手である」長く正座ができないし作法もダメと言うが…。著書の『山月庵茶会記』が面白かったので、単行本で再読したい私は「苦手」とは、とても思えないです。この『古都再見』を携えて、京都の隅々を歩いてみたくなりました。2025/03/01
真理そら
64
解説が澤田瞳子さんだったので買ってみた。随筆になると良くも悪くも新聞記者的な文章&内容になる葉室先生。「幕が下りるその前に見ておくべきものは、やはり見たいのだ」幕が下りる前に書きたいこともいっぱいあったでしょうに…そして読者はまだまだいっぱい作品を読みたかったのに…合掌2020/03/06
けやき
47
古都京都に関するエッセイ。色々な角度から京都を取り上げており面白かったです。2022/02/15
Gotoran
46
2015年2月から京都にも仕事場を設けて暮らしていたと云う葉室麟氏、2017年12月に逝去される直前の作品、現代では無くなってしまった信念、一途、命の尊さを描き続けた著者が遺した軽妙洒脱、千思万考、珠玉の六十八編の随筆。京都をそぞろ歩いて発見したこと、京都に関する様々な歴史上の人物についての滋味溢れる文章で綴られた興味深い話が満載で大変興味深かった。芹沢鴨を始め、幕末の人物がたくさん出てくるが、生きるということの深さ、悲しさを感じさせら れた。さらに改めて、著者の見識の高さを窺い知らされた。2024/05/02