内容説明
優等生がひた走る本線のコースばかりが人生じゃない。ひとつ、どこか、生きるうえで不便な、生きにくい部分を守り育てていくことも、大切なんだ。勝てばいい、これでは下郎の生き方だ…。著者の別名は雀聖・阿佐田哲也。いくたびか人生の裏街道に踏み迷い、勝負の修羅場もくぐり抜けてきた。愚かしくて不格好な人間が生きていくうえでの魂の技術とセオリーを静かに語った名著。
目次
さて、なにから―の章
人を好きになること―の章
男女共学じゃないから―の章
速効性とはべつの話―の章
劣等性の弁―の章
学歴というもの―の章
俺の中学時代―の章
トコロテンB29―の章
優劣に大差なし―の章
もう手おくれかな―の章〔ほか〕
著者等紹介
色川武大[イロカワタケヒロ]
1929‐1989。東京生れ。東京市立三中に入るが、学校になじめず中退。戦後の数年間、放浪と無頼、映画と演劇の日々をおくる。雑誌編集を経て、1961(昭和36)年「黒い布」で中央公論新人賞を受賞。その後、阿佐田哲也名義で『麻雀放浪記』など多くの麻雀少説を手掛ける。’77年『怪しい来客簿』で泉鏡花賞、’78年『離婚』で直木賞、’81年「百」で川端康成賞をそれぞれ受賞する。’88年には『狂人日記』で読売文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
161
麻雀に代表できる人生模様。淡々とした書き口に人生観が溢れる。破天荒な人生の最後が文庫なんてすばらしい。「9勝6敗を目指す」できない。「1勝9敗」を目指すのがせいいっぱい。窮鼠猫を噛むのが自分の目標。阿佐田哲也(色川武大)さんの雑誌の記事をよく拝見していました。あなたは精神力を持っていて、文筆の世界で勝てたからいい。全然劣等生じゃないと外野からは感じる。2013/06/19
ゴンゾウ@新潮部
108
自称劣等生の阿佐田哲也さんこと色川武大さん。博打から身につけた独自の人生観、処世術を論ずる。9勝6敗の法則、運の貸し借り、負ける方法などなど、とても興味深い。人生程々に身の丈あった生き方でいいんだと 言われているようで非常に楽になった。【新潮文庫の100冊 2018】2018/07/10
扉のこちら側
87
2018年292冊め。「私は不良少年だから。劣等生だから」の言葉が繰り返される中で語られる処世術。破天荒な雀聖・阿佐田哲也の印象が強いので、思ったよりも柔らかい口調に毒気を抜かれてすらすら読んでしまった。ベストな結果を出すための無理よりも、モアベターな生き方でもよいのではないかと許してくれるようだ。2018/07/09
じいじ
76
メッチャおもしろかった。10年近くの積んだままを悔いています。1章が6頁、テンポよく読めます。阿佐田哲也の別名をもつ色川さんは、見かけは怖そうな風貌ですが、ホントはやさしい面倒見の良い好好爺だったこと分かります。愛妻(女優:夏目雅子)を亡くして、すっかりヤル気をなくしていた伊集院静氏を立ち直らせたのは、この色川さんでした。そのことは、のちに伊集院静氏が書いた『いねむり先生』を読んで欲しい、色川さんの人柄が詳しく書かれています。その伊集院氏も昨秋、恩師のあとを追うように、73歳で旅立たれてしまいました。合掌2024/11/05
えみ
67
自分の人生しかどう頑張ったって生きることができないから、他人の人生論を聞くのは面白い。ましてそれが自分とは全く違う経験をしてきた人、見てきた人だったなら尚更興味深い。著者は勝負師と生きてきた雀聖・阿佐田哲也の名でも知られる色川武大さん。普通の生き方などどこにもない、一人一人の人生が特別なんだと語る口調は優しい。冷静沈着と思わせて、内には熱い情熱を秘めていた。これは授業、常に大小勝負をしながら生きる私たちへ人生の心構えを教えてくれる一種の授業だ。勝ち続けることだけが成功じゃない…という言葉の説得力が凄い。2022/02/15