内容説明
転落死を遂げたマンガ雑誌編集長、南部正春。悪名は高かったがマンガを深く愛していた。フリーの凄腕編集者・醍醐真司は彼の死に疑問を抱きつつ、後継編集長に就任する。一方、“業界専門の探偵”水野優希も南部の調査を依頼される。やがて昭和史最大の謎「下山事件」が見え隠れし始めて。『20世紀少年』などのヒット作を手がけた名編集者が創作の原点と現場のリアルを描く、傑作エンターテインメント。
著者等紹介
長崎尚志[ナガサキタカシ]
作家・漫画原作者・編集者。週刊漫画雑誌編集長を経て、2001(平成13)年フリーに。漫画原作・脚本に『MASTER キートン』『MASTER キートン Reマスター』(浦沢直樹)。リチャード・ウー名義で『クロコーチ』(コウノコウジ)、『ディアスポリス 異邦警察』(すぎむらしんいち)など多数。’10年、『アルタンタハー 東方見聞録奇譚』で、小説家としてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
107
長崎さんのシリーズ3作目です。最新作の「人狩人」と設定(男性と女性の二人組が事件を解決していく)は似ているのですが、今回は主人公が中堅出版社のコミック誌の編集者になるのですがその前任者の死の原因を元刑事の探偵と探っていく行くということでその経過がかなりきめ細かく書かれています。編集局員や漫画家とのやり取り、貸本漫画や紙芝居の歴史など楽しめました。長崎さんが浦沢直樹さんのBILLYBATで書かれた下山事件についても詳しく書かれています。2024/11/07
坂城 弥生
53
人にはいろいろな顔があって、相手によって、時代によって、あるいは気分によって表情を変える。それを突きつけられたような気分になる真相だった。2021/03/11
ミエル
39
醍醐真司シリーズ3作目。ドラマ視聴済み、このシリーズがどんどん好きになる。今回は偏屈な編集長の死から展開するミステリーが主軸、その人物像を追う流れはストレートで読みやすい。どんな地位や年齢になっても、ヒトは欲求と信念の間で心を揺らし続ける。個人的にはこの真理を丁寧に描かれると無条件に引き込まれる。人情ものミステリー万歳笑 前作までは漫画業界の特殊さ、情熱に瞠目していたけれど今回は違った。他の特徴付けた商品やサービスを提供する仕事と同じようなミッションがあるのだね。大きくは変わらない事に親近感を覚えた。2024/07/07
みこ
23
漫画編集者・醍醐真司が部数の落ちた漫画雑誌の立て直しを図りつつ、前任の編集長の死の謎を追う。浦沢直樹漫画の原作としても知られる作者のミステリー。シリーズものということを知らずに読んでも十分入っていけるのだが、作者は良くも悪くも漫画の人という印象。特にそれを感じたのが醍醐が編集長として初赴任するシーン。部下である編集者たちと彼らが担当する漫画家、初出の名前が十人近く一気に紹介される。漫画ならともかく、文字だけだと情報処理が追い付かなかった。2021/03/03
瀧ながれ
22
漫画雑誌の編集長になって欲しいと依頼される醍醐。前任者はビルの屋上から転落死していた。休刊も目前の売れ行きである漫画誌の未来に頭を悩ませながら、醍醐は前任者がこの雑誌をどうしようとしていたのか、またその死の真相について探り始める。転落は事故か自殺か、彼を知る者は皆、醍醐自身も、彼は誰かによって殺されたのだろうと考えていた。それほどに、癖のある人物だったのだ。…サラリーマンをターゲットにした漫画誌の売り上げって、いまどのくらい厳しいのかな。出版のいろいろに思いを馳せる読書になった。残ってほしいな漫画雑誌。2021/03/27