内容説明
旅に出たい。遠くへ行きたい。それなら汽車旅がいい。ローカル線はもちろんのこと、廃線跡を歩いて在りし日の情景に思いを馳せ、大都市の新線で見知らぬ世界に乗り込む。「宗谷本線と北辺の廃線跡めぐり」、「千葉県のニュータウン鉄道」、神戸の私鉄を乗り比べた「阪神の私鉄の面白さ」、「紀勢本線ひとまわり」など、旅情に溢れた、汽車旅の魅力が再発見できる鉄道紀行文十八篇を収録。
目次
宗谷本線と北辺の廃線跡めぐり
北上山地、茫洋汽車旅
秋田内陸縦貫鉄道の熊と美人
八高線は関東武士
千葉県のニュータウン鉄道
大井川鉄道のアプト式新線
大糸線は塩の道
北近畿タンゴ鉄道の陰翳
紀勢本線ひとまわり
阪神の私鉄の面白さ〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ドナルド@灯れ松明の火
17
宮脇さんが選んだ紀行文を集めたもので、未読のものもありいつもながらの簡潔で余韻のある文章。書かれてからさらに廃線・第3セクター化等で当時と変わってしまっている線もあるが訪ねてみたくなる。特に大糸線や紀伊半島一周などは行きたくなる。お薦め2016/11/11
ひねもすのたり
9
一時期、書店の平積台を占領していた紀行文の名手宮脇俊三。 気がつくと没後十年になります。 本書の中に収められているエッセイの中では東北新幹線の終着は盛岡。九州新幹線はもちろんありません。 目的地に至る手段として鉄道は格段に早く、便利になりましたが、そこに至るまでの過程を楽しむ交通手段としての魅力は薄らいでいるように思います。 朴訥としていながらもキレのある文章で語られる鉄道の旅は懐かしいものになりつつあります。 2013/07/01
さっと
8
東京都心へ通勤圏内の新興住宅地に伸びる新線ルポ「千葉県のニュータウン鉄道」や、関西の私鉄に乗りまくりながら、関東との比較、都市開発の歴史を考察する「阪神の私鉄の面白さ」、新駅設置・運転本数増にも関わらず運行ダイヤはほぼ従来どおりの「松浦鉄道は変幻自在」など、バラエティーに富んだテーマ設定は時刻表マニアならではのもの。終着駅に関する紀行文は3つあって(ひとつは「終着駅」を10タイプの型に分けてみようという非常にマニアックなもの)、『終着駅へ行ってきます』へのつながりもあり、ファンは読んで損なしの一冊かな。2015/05/11
Mzo
6
流石は文藝春秋の名編集者と言われただけあり、宮脇氏の文章は読みやすく、品がある。さらっとした筆致で旅の魅力を存分に伝えているのがいいね。鉄道で旅に出たくなります。2013/06/06
のぞみ
4
日本の最東端と最西端の間に、1時間もの時差がある事を知っているだろうか。旅とは「日常性からの脱却」こそが真理だと宮脇さんは言う。いつもの駅の、いつもと違うホームに立ってみる。いつもと反対方向の列車に乗って、いつもの駅までと同じ数だけ行った先の駅で降りてみる…それだけで私達は『旅』をする事が出来る。名物名所など無くていい、見た事の無い景色を見てみる。それだけで良いのだ。お金は掛けられなくても、それくらいの「時間」を自分の為に掛けてみる。幸福を感じるのは本当はとても簡単なこと。折角列車が走っているのだから。2017/01/13