内容説明
五歳のとき双子の妹・毬絵は死んだ。生き残ったのは姉の雪絵―。奪われた人生を取り戻すため、わたしは今、あの場所に向かう(「楽園」)。思い出すのはいつも、最後に見たあの人の顔、取り消せない自分の言葉、守れなかった小さな命。あの日に今も、囚われている(「約束」)。誰にも言えない秘密を抱え、四人が辿り着いた南洋の島。ここからまた、物語は動き始める。喪失と再生を描く号泣ミステリー。
著者等紹介
湊かなえ[ミナトカナエ]
1973(昭和48)年、広島県生まれ。2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録する『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、’09年には本屋大賞を受賞した。’12年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、’16年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。’18年『贖罪』がエドガー賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さてさて
365
『飛行機ごと吸い込まれてしまうのではないかと怖くなるほど、海が青い』という太平洋の小さな島国・トンガ王国。4章から構成されたこの作品、前半の3つの章ではあの日、あの瞬間、あの場所で未来を変えられてしまった3人の女性が、地上の楽園とされるこの国をそれぞれの理由で訪れる物語がそれぞれの視点で順に語られていきます。そして続くのが前半の3つの章が持つ意味合いと、この作品が生まれた理由が明らかになる終章。『どんな時でも、自分のなすべき仕事を続けてくれる人がいる』という湊かなえさんの思いにとても共感できる作品でした。2021/08/15
馨
329
阪神大震災を経験した主人公たちの、それぞれ繋がりのある短編集。杏子と花蓮の話が1番好きです。最後の表題作『絶唱』は悲しかったです。阪神大震災からもう20年。被災者でないとわからない苦しみが沢山ありすぎて胸が痛くなりました。2020/02/01
カメ吉
328
これはイヤミスじゃない作品。阪神大震災で傷を負った女性たちの4話の短編作。どの作品にも『尚美』という現地在住(トンガが舞台)の女性が登場して尚美と出会う阪神大震災で被災した女性と関わり支えて癒していく様はミステリーとは思えない内容でした。『太陽』の母子は一話目の『楽園』でも登場しててダメな母親だったけど『太陽』では実は精一杯に生きる迷える母親だった。 阪神大震災とトンガでどの話も繋がり深い内容。特に最後の『絶唱』は著者本人がモデル?って話でより深い読後感でいつもの湊作品とは別物と感じました。2019/07/13
こーた
261
大学にいたころ、外国のひととおしゃべりをする機会というのがたびたびあった。とにかく英語が苦手で、YesとかGoodとか単語の羅列でその場をしのぐのだが、うまく伝えられないもどかしさはいつもかんじていた。でもよくよく考えると、日本語の会話でも微妙なニュアンスをうまく伝えられないということは、よくある。ことばであらわした世界と、ぼくのおもっている世界は一致していないし、それは当然、あなたの見ている世界ともちがうはずなのだが、共通の言語を使っていると、その違っているということをつい忘れてしまう。世界の認識を⇒2019/10/18
kanegon69@凍結中
216
4つの話すべて阪神淡路大震災とトンガ王国が関係してきます。最初の3章を読み終えた時点で、さすがにうまく裏側の視点を交えながら話を展開しているなと、小説としての巧さをとても感じる作品でした。ところが最後の「絶唱」の章。正直参りました。私なんかが読んでいいのだろうか、果たして読む資格があるのだろうか、そう思いながら、心の中をえぐり取られるような気持ちで読んでいました。おそらくこれはほぼ実話なんだろうと想像します。湊さんの思いが強く込められていたような気がしており、少なくとも私にはその思いがしっかり届きました。2019/07/15