内容説明
ピカソやゴッホ、マティスにモネ、そしてセザンヌ。市美術館の珠玉のコレクションに、売却の危機が訪れた。市の財政破綻のためだった。守るべきは市民の生活か、それとも市民の誇りか。全米で論争が過熱する中、一人の老人の情熱と一歩が大きなうねりを生み、世界の色を変えてゆく―。大切な友人や恋人、家族を想うように、アートを愛するすべての人へ贈る、実話を基に描かれた感動の物語。
著者等紹介
原田マハ[ハラダマハ]
1962(昭和37)年、東京都小平市生まれ。関西学院大学文学部日本文学科および早稲田大学第二文学部美術史科卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事を経て、森ビル森美術館設立準備室在籍時、ニューヨーク近代美術館に派遣され同館にて勤務。その後2005(平成17)年『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞しデビュー。’12年に発表したアートミステリ『楽園のカンヴァス』は山本周五郎賞、R‐40本屋さん大賞、TBS系「王様のブランチ」BOOKアワードなどを受賞。’16年『暗幕のゲルニカ』がR-40本屋さん大賞、’17年『リーチ先生』が新田次郎文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
584
デトロイト美術館の所蔵品は、デトロイト市のみの所蔵品ではない! アメリカ国民、いや人類共有の財産かもしれない……、と思わせてくれた良書だった。DIAのコレクションは「高額な美術品」じゃない。私たちみんなの「友だち」だから助けたいのです、と貧しいながらも500ドルの小切手を寄付した市民の物語に感動。2023/10/12
zero1
322
アートは友だち。美術館は【友だちの家】。キュレーターでもある原田が財政破綻で危機にあったデトロイト美術館を物語として描く。かつて自動車産業の中心地だった都市も没落した。亡き妻が好きだった場所。多くの作品を寄贈したタナヒルの想い。キュレーターのマクノイドにクーパー判事。そしてマダム・セザンヌの物語。短い中に美術館を愛する人たちの話とその再生。500ドル小切手の場面は泣けた。この世に悲劇は多いが、人の強い想いはその場所で何かを継承する。善なる気持ちを信じることができる一冊。読んで損なし。2020/02/23
エドワード
258
あけましておめでとうございます。原田マハさんでスタートです。ミシガン州デトロイト市は、自動車産業で大いに栄え、世界有数のコレクションを持つデトロイト美術館を持っていた。しかし産業構造の変化に乗り遅れた市は2013年に財政破綻し、対策として美術品の売却が検討される。特に年金生活者の訴えが切実だ。「ゴッホより生活を」は正しい。しかし、「美術品は市のものではない。市民のものだ」という意見も正しい。慎重な再建委員会は<売却>ではなく<寄付金を募る>プランを選び、再建を実現させた。発想の転換の見本のような実話だ。2020/01/01
kk
250
危機に瀕した美術館の再生をモチーフに、マスターピースへの人々の憧れと大きな善意を語る、小さな美しい物語。「予定調和的」という声もあるかもしれませんが、ここに描かれているのは、人と美術の関係のあり方や、人の心への美術の響き方などについての、マハ先生の心象風景ということなのかもしれません。野暮にならず、ただ素直にその雰囲気を愉しみたいと思います。2020/03/16
けいご
247
アートを保存する行為は人間にとってどのような意味があるのか?たかが絵、たかが彫刻。人によっては所詮「たかが」なのかもしれない。では、この世界のアートが全て消失したとすると世界はどうなるのだろうか?人間はまた争いを始め、お互いを理解しようとする努力を止めてしまうのではないだろうか?アートが繋ぎ止めてきた世界も確かにある事を考えると美術館は他の建物に比べて特別な意味を帯びている、そんな気がした一冊でした★アートが友達になり得る理由も頷けちゃうねw2020/10/05
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