出版社内容情報
帰りませんか、まがい物の家族がいない世界へ……。いま文学は人間の想像力の向こう側に躍り出る。新次元家族小説、ここに誕生!母性に倦んだ母親のもとで育った少女・恵奈は、「カゾクヨナニー」という密やかな行為で、抑えきれない「家族欲」を解消していた。高校に入り、家を逃れて恋人と同棲を始めたが、お互いを家族欲の対象に貶め合う生活は恵奈にはおぞましい。人が帰る所は本当に家族なのだろうか? 「おかえり」の懐かしい声のするドアを求め、人間の想像力の向こう側まで疾走する自分探しの物語。
村田 沙耶香[ムラタ サヤカ]
内容説明
母性に倦んだ母親のもとで育った少女・恵奈は、「カゾクヨナニー」という密やかな行為で、抑えきれない「家族欲」を解消していた。高校に入り、家を逃れて恋人と同棲を始めたが、お互いを家族欲の対象に貶め合う生活は恵奈にはおぞましい。人が帰る所は本当に家族なのだろうか?「おかえり」の懐かしい声のするドアを求め、人間の想像力の向こう側まで疾走する自分探しの物語。
著者等紹介
村田沙耶香[ムラタサヤカ]
1979(昭和54)年千葉県生れ。玉川大学文学部芸術文化学科卒。2003(平成15)年「授乳」で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)受賞。’09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、’13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、’16年「コンビニ人間」で芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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大きな森の小さな本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
460
やや観念的な感じもするし、テーマそのものは珍しくはないが、語りと小説世界の構築はなかなかに斬新である。終盤を除いては、日常世界の中での違和と、主人公の恵奈による独特の対処法であるヨナニー、そして彼女の「トビラ」への希求が語られる。そして、恵奈における根源的な問いは「家族」は、所詮は虚妄の幻想かということにある。そして、最後のシーンからすれば、家族は本質的には意味を持ちえないということになるのだろうか。村田沙耶香の小説の可能性を広げる作品だと思う。今後も注目していきたい作家である。2018/12/22
夢追人009
197
村田沙耶香さんの「コンビニ人間」を遥かに超えるぶっ飛んだ超異色作です。ネットで見たら村田さんのニックネームは何と「クレイジー沙耶香」と書かれていて随分と失礼な話だなと思いましたが良い意味(?)で当たっているかもとも感じましたね。「カゾクヨナニ―」「カーテンのニナオ」「蟻のアリス」、まあ普通の感覚ではありませんよね。そして誰もが唖然とするこの結末は、究極の非カゾクヨナニーつまりはヒロイン恵奈の巨大な妄想の産物なのか、それとも彼女は新人類で次第に人間は蟻社会みたいな方向に進むのでしょうか?どちらも怖いですね。2019/01/11
抹茶モナカ
127
家族に対する愛情を自慰行為で消化する少女。小学生の一人称から始まるのだけれど、文体が大人の語りなのが、ちょっと違和感。既成の価値観を疑うのは村田沙耶香さんのいつものスタイルで、本作も終盤に向け、良い感じで狂っていて、圧巻。家族という概念が消滅していって、最後に母親と対峙するのだけれど、母親との関係については女性作家さんだからか、『消滅世界』でも書いていたので、やっぱり思いがあるのかな、と思った。2016/11/16
りゅう☆
120
母は家族に興味なし、父は週末は愛人宅。家族の気を引こうとする弟は哀れ。淡々とした感性の恵奈は、家族欲を求めニナオとカゾクヨナニーをして欲求を満たす。工夫して、脳を騙して処理することで満足感を得る。恋人浩平が住むドアの先が本当の帰る場所になるかも?だが彼の幸せそうな顔を見た時に気付いた失敗。家族愛を知らない恵奈のどこか抜けた虚無感が不憫。「おかえり恵奈」の声に導かれたトビラに踏み出したその先は…。ラストはいきなりホラーですか?!あるシステムが生まれる前の世界?これほどの言葉の羅列に村田さんの芸術性を感じた。2020/10/19
優希
117
家族に対する愛情の飢え乾いた様子が全面的に押し出されているようでした。それは性的な欲求とは違うのに、どうも重なるような気がして戸惑いを感じます。家族欲もある種の性欲と言ってもいいのかもしれないのではないでしょうか。少しグロテスクな空気感があって気持ち悪くなってしましました。この作品は肌に合わなかったようです。2017/07/10