内容説明
庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多…本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。―綿貫征四郎の随筆「烏〓苺記(やぶがらしのき)」を巻末に収録。
著者等紹介
梨木香歩[ナシキカホ]
1959年(昭和34)年生れ。英国に留学、児童文学者のベティ・モーガン・ボーエンに師事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
834
(再読)私の父方の祖父母は不思議な人だった。説明のつく事も、つかない事も、理屈ではなく経験で知っていた。私が小さい頃、手に豆ができた事があった。その手の豆を揉みながら何か唱えていた祖母。次の日、手の豆は跡形もなく消えた。どうやったの?教えて!って頼んだら「人に教えると効き目が無くなる、死ぬとき教える」と言っていた。けれど教えてもらう前に亡くなった。綿貫征四郎の隣の家のおかみさんは私の祖父母を思い出させる。この世のものも、あの世のものも、共存していた百年前の日本。知らない筈なのに懐かしいのは、何故だろうか。2015/10/17
しんごろ
670
不思議、妖しい、妖艶?を感じさせるお話!面白い!河童や人魚や小鬼やらいろいろ出てくるわ、季節を感じるわで独特の世界でした(^^)間違いなく再読するでしょう(^o^)ピース又吉さんが愛してやまない本らしいwBGMは女子十二楽坊(古い?w)がすっぽりはまると思います(^^;)2016/01/22
さてさて
637
今は亡き親友・高堂の実家で暮らすことになった征四郎の一年を丁寧に描くこの作品。普段の日常生活から見ることの、聞くことの、そして感じることの少なくなった繊細な光の輝きや音、また、生き物の”生”の営みの美しさ、儚さ、そして力強さが全編にわたって紡がれていくこの作品。そして、そのそれぞれを表現する日本語が持つ無限の可能性に、まるで夢を見ているかのようにどっぷりと浸れるこの作品。梨木さんの巧みな言葉の魔法を通して、まるでこの世界がそこに本当に存在するかのように作品世界の確かな息遣いを感じさせる絶品だと思いました。2022/02/25
yoshida
510
出張の往復の新幹線内で読了。亡き友人の実家を預かる駆け出しの物書きの青年の日々。時代設定は明治後期でしょうか。今の日本からは喪われた、もしくは私たちが便利さと多忙さで忘れてしまった、四季の移ろいや何気ない草花の美しさが味わい深く描かれています。飼い犬のゴロー、隣のハナおばさん、和尚、ダァリアの君、そして突然現れる友人高堂。彼らとのやり取りが一話毎に彩りを添える。サルスベリや桜鬼とのやり取りも良し。もっとゆっくり、四季の移ろいを感じて、道に咲く草花にも目を向ける心の余裕を持ちたいと感じた。料理も魅力的です。2015/07/10
Willie the Wildcat
459
四季折々の草花、生き物、そして・・・、高堂、ゴロー、隣のおかみ、河童、カワウソ老人、小鬼との関わり。 その中でも、ゴローとの”間”、高堂とかけあいは親密でもあるが、ほのぼのとする。京都の竹林で今一度静かに読んでみたい一冊である。その場所も知人の住む湖西線(京都・滋賀の県境)を感じさせた。2011/08/14
-
- 和書
- ニッポン清貧旅行