内容説明
逃げ場のない恐怖の底に堕ちた村で、深夜、何者かの影が蠢き始めていた。窓の外に佇む凍えた気配、往来の途絶えた村道で新たに営業し始めた葬儀社、そして、人気のない廃屋から漏れる仄暗い灯…。その謎に気付いた者たちの背後に伸びる白い手。明らかになる「屍鬼」の正体。樅の木に囲まれた墓場で月光が照らし出した、顔を背けんばかりの新事実とは―。もう止まらない、驚愕の第三巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
271
二極対立による対比構造もまた本書の特徴の1つ。地元民と余所者、村を離れたい若者と村に根差した大人たちは即ちウチとソトで解釈が出来る。更にそのウチとソトは即ち生者と死者、いや屍鬼とに分かれる。閉鎖的な外場村を舞台にしつつ、二極分離された世界。村の中に「外」という言葉を持ちながらも村全体をウチとして捉える田舎村。しかしその名前が示すように実はウチではなく「外の場」だったのだ。カインとアベルの物語に擬えられるならば、生者が住む村は屍鬼が蔓延ることによって流刑地、即ち「外の場」となり生者村本来の姿に戻ったのだ。 2019/04/18
ミステリにゃん
138
屍鬼の存在が明らかになり若い子達が動き出すものの暗中模索・・・。葛藤する村人の中でイラっとする人物も出てきますがそれがまた小野不由美の上手さというか。 何よりここまで3巻あっという間に読み終わりました。話しに惹き込むのは小野不由美ならではなのでしょうか。2021/09/08
ミュポトワ@猫mode
131
屍鬼3巻目読了しました。今回も面白怖い巻でした。徐々に核心を突いていく推測と真実が2方向から語られるようになり、いつ一致するのかワクワクしているとことです。小野先生だし、クライマックスの面白さにはずれはないと思いますが、今から楽しみです。そして思い出すのは、一番初めに語られた序章。あれは最後を物語っていると思いますが、どうなれば、ああなるのかも楽しみで、続けて4巻目を読んで生きたいと思います。ただ、登場人物が多すぎるのは相変わらずの悩みではありますが…2020/06/25
nobby
113
それまでのサスペンスから中盤から一気にホラーに変貌。確かにタイトル『屍鬼』を今更ながら再確認。その存在を自覚した大人・子供それぞれが、様々なドラキュラ伝説やらと重ねながら対抗を試みる。その一方で彼らを“ハンター”と呼び、自分達の足跡を残さぬよう黒幕が暗躍する。夜行性は同じものの、いわゆる吸血鬼と違い風貌は変わらぬ怖さ。双方がたくさんの葛藤を抱えながら全面対決に向かうのか、早速4巻へ進み確かめたい。2015/10/20
sayan
98
ここにきて、連続する死因現象を巡るやりとりは村の内部に巣くう複雑さ、弱さを立体的にする。一方は仮説を立てロジカルな実証実験を試みる。他方は、村の伝承等に拠る直観から、同じ結論に至る。特に伊藤郁美の存在が異彩を放つ。彼女が突き付ける内容に、村人は他人の目があれば荒唐無稽と罵る。しかし、のど元に突き刺さった小骨のごとく、各個人は意識せざるを得ない。迷信、科学的らしい説明、もらたらされる結論は想像の遥か上を行く内容で対抗策はない。確証バイアスともいえる、各人の葛藤を描写するスピード感あふれる展開が読みどころだ。2021/05/03




