出版社内容情報
三年の月日をかけて中国北部からチベットまで辿り着いた西川は、インドへ向かいそこで日本の敗戦を知る。密偵の任務は失うが、それでも新たな世界への探究は止められなかった。ヒマラヤを幾度も超え、さらにさらに奥へ。しかし旅は突如終わりを告げる。西川が著した三千二百枚の生原稿と五十時間に及ぶ対話をもとに、未踏の地に魅せられたひとりの旅人の軌跡を辿る、旅文学の新たな金字塔。
内容説明
三年の月日をかけて中国北部からチベットまで辿り着いた西川は、インドへ向かいそこで日本の敗戦を知る。密偵の任務は失うが、それでも新たな世界への探究は止められなかった。ヒマラヤを幾度も越え、さらにさらに奥へ。しかし旅は突如終わりを告げる。西川が著した三千二百枚の生原稿と五十時間に及ぶ対話をもとに、未踏の地に魅せられたひとりの旅人の軌跡を辿る、旅文学の新たな金字塔。
目次
第八章 白い嶺の向こうに
第九章 ヒマラヤの怒り
第十章 聖と卑と
第十一章 死の旅
第十二章 ここではなく
第十三章 仏に会う
第十四章 波涛の彼方
第十五章 ふたたびの祖国
終章 雪の中へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふう
59
旅はヒマラヤへと入り、ヒマラヤを越え、インドへと続いて行きました。登山装備があっても過酷な峠越えなのに、ボロボロの靴で重い荷を背負い、野宿しながらの旅。雪山の神々しさに力をもらいながらも旅は苦行であり、生きることの意味について深く考えさせられるものだったと思います。『好意をよせてくれた人に深く感謝し、全力で応じようとする。それも言葉ではなく身を粉にして極限まで働こうとする。懸命に働き懸命に勉強する日々。それはとても幸せな日々。』そんな旅が意にそわぬ形で終わり、西川は寂しかったはず。わたしも寂しかった⋯。2025/06/09
Shun
32
当時の日本人でチベットまで足を踏み入れた者は数少なく、かつ中国側から山脈を超えての到達となると難度が非常に高いルートであった。西川は長く険しい旅路を経て遂にチベット入りを果たす。ヒマラヤ山脈からの眺望は困難を超えた者だけに与えられる贈り物として西川の胸に刻まれる。そうして密偵の責務よりも困難な路を踏破する喜びに突き動かされた男はインドへも至り、さらに先のアフガニスタンへと目を向けるが情勢は変わって遂に身許が発覚してしまう。幾度もの困難を乗り越えるその姿に人としての大事なものを教えられたような気がします。2025/05/06
barcarola
5
旅の途中はもちろんなのだが、帰国されてからの西川さんについても、なかなか興味深かった。2025/05/31
ポン
4
今後、中国の内蒙古からインドまでを実際に旅されようと考えられている沢木さん。紀行文を書かれることを期待してます。 文庫本解説 石川直樹さん2025/05/12
Keinona
2
西川一三という人の生き様に圧倒された。特務機関のスパイとして西域に潜入、と聞いて勇猛果敢、もしくは冷酷無慈悲な軍人の潜入記という先入観を持って読み始めたが、良い意味で期待を裏切られた。もちろん命令に従い使命感を持っての旅だが、心から旅=未知との遭遇を楽しみ、出会う人や出来事全てから何かを学んで精神を浄化させていく経過に心を打たれた。亡くなる前の「もっと色々ないところに行きたかった」が、彼の人生を表していると感じた。2025/06/15
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