内容説明
インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗合いバスで行ってみたい―。ある日そう思い立った26歳の“私”は、仕事をすべて投げ出して旅に出た。途中立ち寄った香港では、街の熱気に酔い痴れて、思わぬ長居をしてしまう。マカオでは、「大小」というサイコロ博奕に魅せられ、あわや…。一年以上にわたるユーラシア放浪の旅が今、幕を開けた。いざ、遠路二万キロ彼方のロンドンへ!
目次
第1章 朝の光―発端
第2章 黄金宮殿―香港
第3章 賽の踊り―マカオ
対談 出発の年齢(山口文憲;沢木耕太郎)
あの旅をめぐるエッセイ1
著者等紹介
沢木耕太郎[サワキコウタロウ]
1947年、東京生れ。横浜国大卒業。ほどなくルポライターとして出発し、鮮烈な感性と斬新な文体で注目を集める。『若き実力者たち』『敗れざる者たち』等を発表した後、’79年、『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、’82年に『一瞬の夏』で新田次郎文学賞、’85年に『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞を受賞。’86年から刊行が始まった『深夜特急』三部作では、’93年、JTB紀行文学賞を受賞した。’06年に『凍』で講談社ノンフィクション賞を、’14年に『キャパの十字架』で司馬遼太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こーた
252
世界の情報が容易に手に入らなかった時代に書かれた物語だ。行かなければ見ることができない。ならば行って全部見てやろう、という強い意識をかんじる。その熱量が、いま読む私には少々鬱陶しくかんじられもする。自由になるための逃走。この時代の彼らには、そうやって逃げ出す(そして帰って来られる)自由がまだ残されていたようにもおもえる。その自由は男の特権でもある。女、ギャンブル、オリエンタリズム。世界を見つめる視点は徹底して男性のそれで、その「枠組み」から脱け出すことは決してない。それが私にはひどく物足りないのだ。2020/09/11
ALATA
122
インド、デリーの安宿で重い沈殿物のようにたそがれる。仕事も何もかも捨ててふらりと旅に出た沢木さんのトラベルエッセイ。「さて、これからどうしよう…」そう思った瞬間に体がふっと軽くなる瞬間がある。若い時は何にも考えずただ、ガムシャラらに行動する。自分は臆病なたちなのでこれはできないなぁ。香港、マカオと人の狭い空間を密集し、叫び、泣き、笑い異国の匂いが立ち込める、いい読み物でした。★5※ユーラシア放浪の旅が幕開け。ツキまくっていても、賽の踊りは続かない。気をつけて。2024/10/03
ゴンゾウ@新潮部
112
3回目の再読。中国返還前の香港、マカオ。町の熱気がひしひしと伝わってくる。まだまだ旅は始まったばかり。 【新潮文庫の100冊 2021】2021/07/25
おくちゃん🌷柳緑花紅
102
【新潮文庫の100冊2020】こういう旅って良いなぁ。憧れるなぁ。読んでいるうちに一緒に旅をしている気分になって楽しく読了。さて次にいきます。2020/09/08
ひろき@巨人の肩
97
ノンフィクション作家・沢木耕太郎の紀行小説。1974年に香港、タイのストップオーバーの後、デリーから路線バスでロンドンを目指すバックパッカーのバイブル。第1巻はイギリス領・香港とポルトガル領・マカオが舞台。喧騒と活気に溢れた香港では、未踏の社会の中で感じる孤立感や緊張感、またその中で出会った現地人や日本駐在員の温かなホスピタリティに、旅の醍醐味を感じ憧れを抱かせる。香港から1時間程度で渡航できるマカオでは、サイコロ賭博の痺れる展開が、福本伸行氏の漫画シリーズ「カイジ」を読んでいるようで面白い。2023/07/21