内容説明
古書店で手にした一冊の本に書き込まれていた言葉。公衆電話で演じられた人生の一場。深夜にタクシー・ドライバーと交わした奇妙な会話。…エピソードの断片はさらなるエピソードを呼び寄せ、あたかもチェーン・スモークのように連鎖しながらひとつの世界を形づくる―。同時代人への濃やかな共感とともに都会の息遣いを伝え、極上の短篇小説を思わせる味わいのエッセイ15篇。
目次
鳥でもなく魚でもなく
逆転、逆転、また逆転
老いすぎて
タクシー・ドライバー東京篇
君だけが知っている
わたしに似た人
メランコリーの妙薬
走らない男
アフリカ大使館を探せ
赤や緑や青や黄や〔ほか〕
1 ~ 1件/全1件
- 評価
pure-oneの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
515
今では声優として活躍してらっしゃるお嬢さん(現時点で43歳)が3歳の頃のエッセイ集。古さを感じさせないその視点と構成力。文章力はもちろんのことだ。短い文章の中に込めた起承転結がみごと。冒頭で振った伏線を一度も二度も捻って、読者の想像を超えたところに着地する。若いころは訪問した土地で記念品を欲しいとも思わなかった著者、ある日それを「欲しい」と思った心境がいい。「もうここへは来れないかもしれない」という気持ち、その痛切な寂しさが伝わる。『深夜特急』と共にいくつかエッセイを手に入れたので読むのが楽しみだ。2025/11/11
kinkin
57
どのエピソードもついつい引き込まれる内容だ。タクシードライバーの男の話、走らない男、シナイの国からの亡命者がよかった。シナイの国から・・・にあった「教養のためしてはならない百箇条」に書かれていたこんなコトバ自分は皆とは違う、という気持ちを忘れない、結局は自分も皆と同じだ、という判断を忘れない。自分とは違うものが、違うことが、あることを、忘れない。どんなときにも含羞を忘れない」沢木耕太郎のコトバではないが、これは沁みた。鳥類人間と魚類人間の話も。私は魚類人間だ・・・2015/03/11
眠る山猫屋
51
煙草を吸わない沢木さんが物語る、ささやかにして遠くを視るようなエッセイ。公衆電話の重要性、タクシーでの偶然など、映画を切り口に語る淡々とした文章は時代を感じさせてくれて、なんだか心に沁みる。携帯がない時代、公衆電話(特に真夜中)は必要な場所だったよね?他人に聞かれても話さなければならない時とか・・・。他にも現役時間の短いボクサーと語り部たる記者の幸せを比する逸話も残る。『深夜特急』『一瞬の夏』を読み返したくなった。2021/03/06
Y2K☮
39
再読。棚橋弘至が「何だかんだで女性ウケの一番いい服は爽やかな白いワイシャツ」と云っていたのを思い出す。沢木さんの文章だけが醸し出す飾らぬ魅力はまさにそれ。初読時には知らなかったパーカーやカポーティ、ハメットらに関する考察に惹き込まれ、本と共に長い旅をしてきたなと思い、直後の「懐かしむには早すぎる」という一言に気を引き締める。まるで過去現在未来の交差するジャンクション。旅が、空港が、書店が、そして人々の集うあらゆる場所がそうである様に。何か読みたいけど何を読んだらいいか分からないという方、ぜひこれをどうぞ。2017/08/16
背番号10@せばてん。
37
1996年5月15日読了。沢木氏は私のエッセイの神。(新年 なんちゃって登録初め。2020年1月5日入力)1996/05/15




