出版社内容情報
それぞれに旧い歴史をもち、文学に謳われ、独白の風格をそなえてそびえたつ日本の名峰百座。――著者は、長い年月をかけて、北は北海道の利尻岳から南は屋久島の宮ノ浦岳にいたるまで、それらすべての山頂を極めつくして、本書を綴った。日本人の生活に深く結ばれ、私たちの精神的風土の形成に大きな影響を与えてきた山々の個性を、短い文章のうちに、見事に際立たせた名著。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
194
品格、歴史、個性、ある程度の高さなどを基準に著者自ら登頂した山から選出。主観を自信づけるのは五十年近い登山歴で、山にまつわる伝説や逸話、魅力などをそれぞれ4ページで率直かつ端的に紹介している。他文献、とりわけ和歌などの古典からの引用も多く、観光開発が進む山の現状を見据えつつも独自の憶測を交えながら原始の姿に想いを馳せている。日本人の山への崇敬や親和は登頂ありき、この点大陸とは対極だ。富士山も剱岳も驚くほど昔に登頂済み。女人禁制や即物的な命名法の変遷も印象的、白馬岳や光岳の誤称が定着するのは避けられないか。2021/12/01
ゴンゾウ@新潮部
127
この本を読んで小学生の社会の授業で日本は山に囲まれた島国であると教わったのを思い出した。日本人と山の関係は深い。信仰の山、修行の山、近年はレジャーとして登山を楽しむ人も多い。作者はもう半世紀以上も前から実際に日本中の山々を登山し百名山を選定した。残念ながら私は登山はしないが深田氏の山に対する愛情や畏敬の念が伝わってくる作品だった。2015/11/14
kaizen@名古屋de朝活読書会
124
頂上まで登ったことがある山は記憶にない。麓まで行ったのは、18蔵王22磐梯36男体41草津白根43浅間44筑波54槍ヶ岳55穂高岳58焼岳59乗鞍岳60御岳61美ヶ原62霧ヶ峰63蓼科64八ヶ岳71丹沢72富士73天城74木曽駒ヶ岳84赤石87白山89伊吹97阿蘇。頂上まで車で行ける山があれば行ったかもしれない。解説 串田孫一。後記で山の品格、山の歴史、個性ある山が選定理由。橘南谿「東遊記」谷文晁「日本名山図会」が先達。2013/07/22
hiro
114
新潮文庫の100冊ということで手に取った。名前の由来、初登頂者、著者が登ったときの様子などを、写真と地図も含めて一山を5頁ほどで紹介してくれる、昭和39年出版された本。この百名山は、著者が実際に登り、山の品格・歴史・個性と、付加的条件として1500m以上の高さの山を選定の基準に、著者の主観で選定している。実際自分の足で登った著者とは違うが、この百山のなかで、麓でスキーをした山、列車から見た山、車で中腹まで登った山など、実施に見た山のことを思い出した。もちろん百名山の制覇は、この本読了で達成ということで。 2015/08/22
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
110
1964年に出版された山岳随筆の古典。山好きには必読書として広く知られる一方、登山の趣味がない人には興味を持ちにくい本だと思う。一時期2冊手元に置いて、登頂した山には✕をつけていったことがある。20近く✕をつけた頃、頂上を目指す登山から興味が移ってその習慣はやめてしまったが……。登山ブームで深田『百名山』に対抗するように様々な類書が生まれたが、格調高い文章は名著と呼ばれるに相応しい。ただ、これに選ばれなくても、山はそれぞれに美しい。2015/10/24