内容説明
その男は三十人を嬲り殺した。しかも一夜のうちに―。昭和十三年春、岡山県内のある村を鮮血に染め「津山事件」。入念な取材と豊富な捜査資料をもとに再現される、戦慄の惨劇。不朽のノンフィクション。
目次
第1部 事件(惨劇;事後;論評)
第2部 犯人(一歳(大正六年)中流の農家
二歳(大正七年)父、肺結核で死す
三歳(大正八年)母、肺結核で死す
四歳(大正九年)姉しゃんはお手玉がうまいな
六歳(大正十一年)祖母の里 ほか)
著者等紹介
筑波昭[ツクバアキラ]
1928(昭和3)年、茨城県生れ。日本大学芸術学部中退。新聞記者を経て作家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中玉ケビン砂糖
97
、横溝正史『八つ墓村』のモデルとなった、あまりにも有名な事件を精緻に分析して紹介している、岩井志麻子をはじめとする毒々しい作家を多数輩出し、さらには鬼ヶ島伝説もあるという岡山の謎スペックが気になる(津山と冠がついているが、現在ある津山市とは別の場所である)、精神分析的にみれば男は間違いなくパラノイアの持ち主である、しっかりと系統だてられた妄想なので、論理的にそれを説明することもできるので、「ある」ことを肯定することはできても「ない」ことを証明してあげるのは難しい2015/01/22
nakanaka
77
膨大な資料を基に描かれたノンフィクション。日本犯罪史上空前の惨劇という表紙の副題に偽りなしの記録でした。都井睦雄という22歳の青年の短い人生、そしてわずかな時間で30人もの人を殺めたその一部始終が生存者や関係者の証言や検証を基に克明に描かれています。資料が多いので中弛みしてしまいますが「犯人二十二歳」の章からはノンストップ必至です。当然のことながら都井について理解することは全くできませんが、幼くして両親を亡くしたことと過保護すぎる祖母の存在が彼を歪めた大きな要因だと思いました。「八つ墓村」を読まねば!2018/04/13
たつや
70
身の毛もよだつ大量殺人のドキュメントは驚愕の連続だった。八墓村のヒントになったことで、有名な事件でしたが、狭い村で夜這いや不倫が横行しており、犯人の精神は歪んでいく。人の妻で、母親くらいの年齢の女婿に嫉妬し、体の関係を拒まれたり、嫌がらせをされ、積もった恨みを爆発させた都井は悪魔と化し歴史的な殺人劇が始まる。恐ろしいけれど、一気読みした。2017/03/13
みゃーこ
62
独特のルポ形式だ。縦横に縦横無尽に犯人が一夜にして32人の殺戮と言う恐慌に至るまでの経緯を余すところなくその社会背景から特有の嗜好形成ができあがるまで詳細緻密に追うという、時には細かすぎて横道にそれてもまた元に戻る。そして物語はじわじわと核心に迫る。そこにあるのは、因循姑息で退嬰的な村の気風、寂寞感。犯人が背負っていた「良い子」としての仮面を脱ぎ捨てがたいどことなく圧迫感のある成育環境、戦時の男尊女卑としての社会風土、そして執拗で偏執的性欲の衝動、抑圧された自己顕示欲。それらが混然一体になり迫ってくる事件2015/08/12
GAKU
57
ご存知「八墓村」の元となった『津山事件』のノンフィクション。昭和13年春岡山県のある村、犯人の都井睦雄は黒詰襟の服に、足にはゲートルと地下足袋。頭には二本の懐中電灯をつけ、首から自転車用前照燈を下げ、薬莢入り雑嚢を肩からかけ、日本刀一振りと匕首二本を腰に下げ、深夜の2時間で23戸中12戸、約30名の村民を惨殺した。はじめの約100ページは当時の検事調書、供述をベースとした事件のあらまし。残り約250ページは都井の生い立ちから犯行まで。実際の犯行の描写が生々しく、恐ろしい。⇒2019/11/23