内容説明
シャクリと呼ばれるポンプ・アクション6連発銃、ウインチェスター・M12。その銃を手にした男たちのそれぞれの生き方―。自分の射撃スタイルに最後まで固執した選手、一人前の男として生きる姿勢を身をもって息子に教えた父、悪徳養豚業者と闘う陽気なマスター、スパイらしき男と闘争を余儀なくされた老人。銃が人手を巡り、生みだされた四つの切ない物語。ハードボイルド連作短編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
goro@the_booby
66
再読了。名作「ダックコール」に比肩しても遜色がないこのオムバス連作短編。一つの散弾銃ウィンチェスターM12が辿る数奇な運命と男たちの悲哀を描き胸に迫る。己の死のために、息子を守るために、愛する人を守るために、そして最後はこの銃の死に場所に辿り着く。病に倒れ稲見一良氏の作品は少ないけどいつまでもきらきらと輝いてる。最後の一文は作家稲見氏からのメッセージだな。またいつか読むだろう物語です。2022/05/01
yumiha
43
読み友さんから勧められた本書。主役は、ウィンチェスター・M12という銃。次々と所有者を替えるたびに生まれるショート・ストーリー4篇の連作。たぶん勧められたのは第2章「斧」の少年がイノシシと対峙する場面だったのではないか?少年の父の先を見越した決断にウルウルしながら読んだ。どの短編もドキドキさせる緊張感に加えて景色やアクションの描写も、登場人物の気持ちが過不足なく描かれるのも、読み応えがあった。特に第4章「銃執るものの掟」の老炭焼き猟師の「死ぬまでは生きようとする、死に抵抗する」ことが「人の誇り」に共感。2024/09/28
きょちょ
36
短篇4作。日本でもハードボイルド作品は多数あるけれど、彼のは実に「独特」である。ハードボイルド作品では、車・バイク・銃・鍛えられた肉体などが登場する作品が多い。 時にそれが嫌味になるケースがあるが、彼の作品にはそういったことがない。さらに、ハードボイルド作品には、「気障なセリフ」が数多く登場する。はまれば素敵だけれど、はまらないとどうしようもない。今回の作品では3作目に「気障なセリフ」を多用しているが、ここでは気障の気障を消してさらに「気障」なのが良い。「HB]という店の名前の解釈もgood。 ★★★★ 2018/04/07
ken_sakura
28
一丁の銃ウインチェスター・M12が変遷する4つの短編集。とても男臭く、それが良い(^_^)心の底に硬い蓋を持つ男、男がいてもいなくても一人立つ女、人に寄り添う勇敢な犬のお話。2017/03/03
三平
24
次々と持ち主を変えていく一挺のポンプアクションショットガンを巡る物語が綴られる連作短編集。タフで優しい男の理想の姿を追い求めた大人のファンタジーと言えるだろう。デビュー作故にご都合主義を感じる作品もあったが、人生を生き抜いていく為に必要なことを、離れて暮らしていた息子に山での数日間でしっかりと伝える男を描く『斧』は素晴らしかった。銃を持つことの重みを感じるハードボイルド。2017/01/27