新潮文庫<br> エリザベスの友達

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新潮文庫
エリザベスの友達

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  • サイズ 文庫判/ページ数 267p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101203522
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

戦後、命からがら娘と日本に引き揚げた初音さんは今年九七歳になる。もう今では長女の顔もわからない。病が魂を次々と?いでゆくとき、現れたのは天津租界でのまばゆい記憶だ。ドレスに宝石、ミンクを纏い、ある日はイギリス租界の競馬場へ、またある日はフランス租界のパーマネントに出かけ、女性たちは自由だった――時空を行き来しながら人生の終焉を迎える人々を、あたたかく照らす物語。

内容説明

戦後、命からがら娘と日本に引き揚げた初音さんは今年九七歳になる。もう今では長女の顔もわからない。病が魂を次々と剥いでゆくとき、現れたのは天津租界でのまばゆい記憶だ。ドレスに宝石、ミンクを纏い、ある日はイギリス租界の競馬場へ、またある日はフランス租界のパーマネントに出かけ、女性たちは自由だった―時空を行き来しながら人生の終焉を迎える人々を、あたたかく照らす物語。

著者等紹介

村田喜代子[ムラタキヨコ]
1945(昭和20)年、福岡県北九州市八幡生れ。’85年、自身のタイプ印刷による個人誌「発表」を創刊。’87年「鍋の中」で芥川賞を受賞。’90(平成2)年「白い山」で女流文学賞を、’92年「真夜中の自転車」で平林たい子賞を、’98年「望潮」で川端康成賞を、2014年『ゆうじょこう』で読売文学賞を、’19年『飛族』で谷崎潤一郎賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ちょろこ

136
揺らす一冊。良かった。戦争、満洲、引き揚げ、認知症、人生の終焉を描いた物語は決して明るくはない世界。でも時折パッと華やぐ明るい色彩が飛び込んできて、心の底を優しく揺らす時間だった。天津租界、溥儀、婉容夫妻、束の間の自由を謳歌した思い出の扉が開かれる時はもちろん、その母を見つめる娘達、介護士の目線がまたせつなく心を揺らす。自分はまだこういう家族経験がないからかそう思えるだけか…時空を旅する初音さんが可愛く、愛しく思えた。認知症とはまるでゆりかごの中で、未来ではなく過去を再び掴む夢を見る時間のような気がする。2022/04/17

ばう

81
★★★★ 村田喜代子さんはいつも私の知らなかった女性の歴史を教えてくれる。今回は老人ホームで暮らす、戦争を経験した認知症の人達の話。彼らにとって戦争は決して歴史の教科書の中の話ではない。今も戦争の記憶を引きずって暮らしている。一つの世界、時間の中の話のようでいて、その中で97歳の初音さん達ホームのお年寄りの頭の中では別の時間が流れている。夢と現実を行き来してやがて懐かしい者たちの元へ旅立っていく。「認知症は自由ですよ」という介護士の言葉が心に残る。本編 264ページ、薄い文庫本なのに中身の濃い一冊でした。2022/07/27

佐島楓

72
満州で自由を謳歌し、戦後の混乱のなか命からがら引き揚げてきた初音さんとその娘さんたちの物語。家族であっても理解の及ばない若い時分の世界に遊ぶ初音さん。世代によって、生きてきた時代が異なりすぎるのだということをまざまざと見せつけられる。亡くなった祖母にもっと早くいろいろなことを聞いておくんだったなあという思いがこみ上げた。亡くなってしまったら、その人が背負ってきた歴史や記憶はほとんどが失われてしまうのだから。2021/09/19

たま

68
『姉の島』『飛族』『エリザベスの友達』と発表年代を遡って村田さんの高齢者小説を読む。『エリザベス』の高齢者たちは認知症もある。「彼女たちの小さい体は枝に吊り下がった蓑虫に似ている。…初音さんは自分の形なりの小さい巣の中で、外の光をぼんやり感じながらうつらうつら過ごしている。」作者はするりと蓑虫の巣に入り、昔へと遡るその心の動き、記憶の中の満州や朝鮮での暮らし、戦争、内地への帰還の情景を自在に鮮やかに蘇らせる。人生の最後にたどり着く美しく懐かしい思い出。それが彼女たち一人一人のまたとない生を輝かせている。 2023/06/09

naoっぴ

58
認知症がすすみ、過去を放浪する97歳の初音さん。すっかりボケてしまったホームの老人たちの様子はシュールだけれど著者の目線が温かく、切なくも幸せな読み心地だった。その娘の千里と満州美は、母の側にいながらも思いは交わらない。戦争の暗い記憶、幸せな過去。認知症の老人たちは身体を抜け出し時空をすり抜け、それぞれの過去をもう一度過ごして暮らす。現実ではなくとも、彼らの目にみえている限り現実なのだ、という言葉が印象に残る。老人の目に映っているものを受け入れる。簡単ではないけれど大切なことを教えてもらった。2021/10/05

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