出版社内容情報
愛着が湧く前に捨てる。それが鉄則だ──。ライター業のかたわら、ミニマリストな生活を発信する男、冴津。貰った物は家に帰ると捨て、家具や服は極力減らし、無駄を削ぎ落すことを追求する日々。そんな「身軽生活」を体現する彼の前に現れた“かつての自分”を知る男。その出会いは記憶の暗部を呼び起こし、信じていた世界を徐々に崩壊させていく。芥川賞作家が放つ、不穏でスリリングな超問題作。
内容説明
愛着が湧く前に捨てる。それが鉄則だ―。ライター業の傍ら、極力ものを持たない生活を発信する冴津。貰った物は家に帰ると捨て、家具や服は徹底的に減らし、無駄を削ぎ落すことを追求する日々。そんな「身軽生活」を体現する彼の前に現れた“かつての自分”を知る男。その出会いは記憶の暗部を呼び起こし、信じていた世界を徐々に崩壊させていく。芥川賞作家が放つ、不穏でスリリングな超問題作。
著者等紹介
羽田圭介[ハダケイスケ]
1985(昭和60)年、東京生れ。高校在学中の2003(平成15)年に「黒冷水」で文藝賞を受賞しデビュー。明治大学商学部商学科卒。’15年、「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かみぶくろ
43
3.7/5.0 相変わらずこの作者の小説は皮肉が利いているし気も効いている。今回はミニマリストだが、現代病っぽい人物を描くことで、人間一般をきっちり深掘りしていると思う。理屈で考えようとする極端な主人公がわりと好み。ムルソーっぽくもあり、なんか作者のイメージとも重なる。ミニマリスト的生活が複雑な思考を遠ざけ、混沌がアイデアや刺激を呼び込むっていう作中示される考えに、すごく納得感があった。2024/09/21
新田新一
33
不必要なものを捨てていく男性が主人公の物語。彼は同様な生活を実践している人たちとつながりを持つようになり、現代社会の一つの潮流を体現している人物として注目を集めるようになります。でも、彼の後ろ暗い過去を知る人物が現れて、華やかな生活は一転。追い詰められて、題に示されているように自分自身を否定する羽目になります。結末に出てくるゴミ屋敷の中で主人公が取る行動が印象的。この時の否定的な情熱を、肯定的なものに変えていれば、彼は立ち直ることができたのではと思いました。人生には完全に否定するのが困難なものもあります。2024/08/24
みこ
31
世間に対してミニマリストを売りにしている男の下に隠しておきたい過去を知る男が近づいてくる。ミニマリストと言ってもそれで一括りにできるものではなく、様式は様々らしい。実質一人称なので、主人公のミニマリストこそが絶対的に正しいと語られているようだが、同時に過去の行いについて独善的な語りもあり、主人公の意見を逆に疑いながら読まざるを得ない感じになってくる。物を捨てることの行き着く先はゴミ屋敷かはたまた人間関係も過去も全て捨て去ることか。2024/09/17
seba
20
冴津はライター業の一環として、なるべく物を持たない自分のライフスタイルを発信している。ミニマリストの中でも、例えば洗濯機や冷蔵庫を所有するかどうかによって流派があるという序盤の眉唾な話が興味深い。ここに時間に対する考え方の差異が表れており、それぞれに目的を実現する生き方を選択しているということらしい。その話を受け入れた上で、目的が先鋭化しすぎて行き着いた先には自分の内外に何が残るのかと疑問に思う。また彼は自分の生き方やそれを発信する行為の矛盾を頭ではわかっている節もあり、そこは中途半端というより一長一短。2025/01/18
イシカミハサミ
16
“滅私”かぁ。 この上なく滅私だった。 ミニマリスト。 もう最近では広報活動はあまりなくなって、 一定の人数がそれなりに目指しているスタイル、というイメージ。 工場生産で安定した品質のものが確実に手に入ること。 どこに住んでも安定した収入ソースが得られるネット環境。 大量消費の社会の向こう側の生活スタイルである、というのはそうだよなぁ、という感じ。 作中、“元ミニマリスト提唱者”がゴミ屋敷の住人になっていく過程が心情も描かれていないのはかなり残念感があった。2024/08/25
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