内容説明
人生の折り返し地点をとうに過ぎ、もう恋など忘れたはずだった―。結婚を考えるほど愛していたのに、突然消えた女。四十年後の再会、そして別れの理由に涙する表題作。その他、若き日に性の手ほどきを受けた人妻の娘に出会う「観覧車」、離婚した幼馴染みへのひそかな思慕を描く「土産話」など、全六作を収録。年齢を重ねたからこそわかる、深い味わいと切なさに満ちた、名手による最期の恋愛短編集。
著者等紹介
藤田宜永[フジタヨシナガ]
1950‐2020。福井市生れ。早大中退後、渡仏。エール・フランス勤務、帰国後のフランス語教師などを経て、エッセイを書きはじめる。1986(昭和61)年『野望のラビリンス』で小説デビュー。’95(平成7)年、『鋼鉄の騎士』で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会特別賞受賞。’97年の『樹下の想い』で恋愛小説にも新境地を開き、’99年『求愛』で島清恋愛文学賞受賞、2001年『愛の領分』で直木賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おしゃべりメガネ
104
さすが藤田先生、中年悲哀を綴らせたら、ホントに天下一品、無双状態な作品でした。60前後の中年男性が主人公の短編6編からなり、どれも特段派手な話ではないにしろ、ごくごく普通の目線にありながら、ついついそれぞれの主人公へと感情移入してしまいます。話の展開的にちょっとできすぎ感は否めないものの、その繋がりこそがある意味、ちょっとしたファンタジーであり、枯れかけた中年男性を元気にさせてくれる源なのかもしれませんね。おじさんにはおじさんの、地味ながらもステキな生き方があるんだなぁと。改めまして藤田先生に、合掌。2023/01/26
ふじさん
96
表題作「わかって下さい」は、因幡晃の大ヒット作。私のベスト作品。40年前に、結婚を考えるほど愛していたのに、訳も言わずに突然姿を消した元恋人と「青春のフォークソング」という公開放送で偶然隣り合わせになる。盲人となった彼女は、目の前にいる昔の恋人との懐かしい日々を別れた理由も交えながら語る。まさに涙、うまい。本書の主人公は、概ね60代まん中の男性で退職後の元サラリーマン。人生の終盤を迎えた同輩への強いエールとも取れる内容。年齢重ねたからこそ分かる、深い味わいと切なさを描いた彼の最期の恋愛短編集。 2023/01/17
森オサム
42
60代の男性を主人公とした恋愛短編集。今年お亡くなりになった著者の最期の恋愛短編集との事。それぞれゆったりとした老後を過ごす主人公たちが、ふとした切っ掛けで過去の恋愛を思い出したり、現在の自分に残された時間を考えたりする。読んでいて寂しくなりなりつつも、温かい気持ちにも包まれた。ミステリー要素の全く無い恋愛小説を読んだのは初めてかも。今後も進んで手に取る事は無いでしょうが、本作は読んで良かったと思えた。15年後主人公たちと同世代となる。その頃再読したらどんな気持ちになるんだろう?。まずは元気でいないとね。2020/12/12
やさぐれパンダ
24
初読みの作家。流れるような文体ですいすい読める。 60代の初老の男を主人公とした6編の短編小説集。 小生の年代の男を主人公にしており 共感を持って読み進めることができた。2023/01/26
団塊シニア
19
表題作含め6篇の短編、いずれも作者と等身大の男性が主人公で団塊世代としては、懐かしさもあり一気に読める作品であった、今年1月69才で亡くなられたことは残念、ご冥福をお祈り申し上げます。2020/09/14