出版社内容情報
孤独と焦燥に悩む青春の心象風景を写し出した第一詩集「月に吠える」をはじめ、孤高の象徴派詩人の代表的詩集から厳選された名編。
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クプクプ
81
萩原朔太郎の本は初めて読みました。遊園地のことを「るなぱあく」と呼んだり、地下鉄道を「さぶうえい」と呼んだのは時代背景を感じました。利根川のそばに住んでいたらしく詩に何回か利根川のことが出てきました。また今、ロシアとウクライナの戦争が行われていることもあり「軍隊」という詩も強く印象に残りました。萩原朔太郎が、詩は昨日より今日の方が成長するということがない、と言ったのは詩の本質が少し見えたように感じました。2022/05/14
ビブリッサ
45
デカダンという単語が昨夜の読友さんとのやりとりに出てきた。私の中で「デカダン」の語が初めて実在のモノとなり姿を現したのが朔太郎の詩だ。人は誰でも単位で生まれて、永久に単位で死ななければならない。この真実に、不具なこどものように泣く魂に、その心臓に、乙女の手が触れて寄り添う。それが詩だと彼は謂う。私にも、乙女の手がかかる瞬間がある。ひんやりと冷たく優しい指先は 慰めだけでなく官能的であり同時に腐臭も感じるのだ。詩のリズムの中で、ひとり身悶え、心の中で自分の悲鳴を聞くのはデカダンだと思っている。2017/04/26
新田新一
30
萩原朔太郎の詩は苦手で敬遠していました。今回この詩集を読んで、良さが分かったと思います。後半に収められている文語体の詩が特に好みでした。初期の『月に吠える』の詩は斬新なイメージが繰り出され、言葉に勢いがありますが、自分の内面を見つめて書くといった感じではありません。文語体で書かれた『氷島』は内面に目を向け、孤独感と望郷の思いが詩情豊かに語られています。『氷島』を読みながら、萩原朔太郎はボードレールと同じように自分が所属する場所がないままに、詩を書くことでこの世に根を下ろそうとしたのだと思いました。2024/10/26
まーこ
24
“~ながれてゆく砂と砂との隙間から、蛤はまた舌べろをちらちらと赤くもえいづる、この蛤は非常に憔悴れているのである。みればぐにやぐにやした内臓がくさりかかつて居るらしい、それゆえ哀しげな晩かたになると、青ざめた海岸に坐つていて、ちら、ちら、ちら、ちらとくさつた息をするのですよ。”~くさつた蛤より~萩原朔太郎の世界は可憐で純粋で性的で私の中では苦手なワイルドとかぶるのですが朔太郎さんの詩はなぜか引寄せられるから不思議です。2017/02/27
tomo*tin
22
三叉路で左右どちらに行くべきか迷う。おそらくどちらに行っても辿り着く場所に差はないと知っていて迷う。空は厚い雲に覆われ、世界は灰色で、誰もが濃い青の孤独を胸に飼っている。ときどき何かの拍子にそれらが静かに顔を現し、一瞬で嵐を呼びよせる。呑み込まれまいと抗い、幻想に耽り、いつか世界の芯を見る。彼は詩を「悲しき慰安」だと言う。きっとそこは悲しさと美しさが比例する世界なのだと思う。そして私はいつ読んでも「月に吠える」の序文でヤラれ、三叉路の存在すら忘れてしまう。愚かなことである。2009/06/03
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