内容説明
なつかしい故郷を離れて、東京の大学へ進学した英雄を、過酷な運命が待ち受けていた。変わり果てた旧友との再会、父と「高木の家」への訣別、初めての狂おしい恋、そして荒海に消えた弟・正雄。別れの痛みを背負ってひとり旅立ち、最果ての岬にたどりついた英雄を、海潮音が包みこむ…。人の絆の重みと生きることの意味を熾裂に問いかけた自伝的長編「海峡」三部作、ついに完結。
著者等紹介
伊集院静[イジュウインシズカ]
1950(昭和25)年、山口県防府市生れ。立教大学文学部卒。’91(平成3)年『乳房』で吉川英治文学新人賞を受賞し、’92年『受け月』で直木賞、’94年『機関車先生』で柴田錬三郎賞を各受賞する。2002年『ごろごろ』で吉川英治文学賞を受賞。小説やエッセイで幅広い読者の支持を受けている現代文学の旗手
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感想・レビュー
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KAZOO
134
伊集院さんの本の三部作最後です。かなり厳しいときがあったりしますが、最後はすっきりと終わらせてくれるのが伊集院さんのいいところです。小説なので自叙伝というところまではいかないのでしょうが、ご自分の経験したようなことをうまくアレンジして読ませてくれました。人と人とのつながりをうまく大河小説にしてくれました。2016/03/21
NAO
55
海峡シリーズ三部「岬へ」は、英雄の東京での大学生活と、高校時代の回想からなっている。高木の家との決別を決めていた英雄のもとに弟の正雄が海で行方不明になったと知らされ急遽帰宅する。英雄が正雄の遺体を海から引き揚げる場面は悲壮だが、そのあと日記を読むことで英雄が知る正雄の真情。高木という複雑な家に育った兄弟が、二人とも心根の正しい優しい人間に育っていることが、不思議なようでもあり、救いのようでもある。数々の別れののち、英雄は、世界を見たいと旅に出る。英雄もまた、海を渡ってきた父親の血を濃く引き継いでいるのだ。2022/10/12
キムチ
37
筆者初読み。読み友さんのコメントに刺激を受け、足を踏み入れた伊集院世界。少し上の世代でありながら、ここで描かれる風景は「よき昭和の地方の景色」そして少年が様々な周囲との軋轢で彷徨う中、時には制裁あるいは薫陶を受けつつ皮が剝けて行く経過が水彩画のように描かれている。氏の風貌からはもっとぎらつくと思いきや!だった(もっとも私、結構先入観おばさんでして)高木英雄は氏の分身であろう・・従って父親と絹子さんの描写はある意味オマージュ的思いも込められているように受け止めた。2015/02/26
B-Beat
35
★海峡三部作の完結編。一気に読み切る。東京の大学に入学が決まり上京する折、神戸の病院に入院する父を弟を連れ立って見舞うところから物語が始まる。その道中で交わされる兄弟の会話が清々しく沁みる。「~じゃ」瀬戸内言葉に親近感が増す。高校時代の恩師やアルバイト先の先輩などとのエピソードもどれも無駄がなく完結への布石として置かれたかのようにページ捲りが進む。物語の最後、日本海に臨む岬の突端に立つ主人公に作中の恩師カモン先生が語るところの「人間はコスモポリタンであるべき」との著者のメッセージが鮮烈に伝わってくる。 2016/02/05
雨猫
13
英雄大学生になる。大学がつまらなく学生というよりは肉体労働者になる。そしてまた様々な出会いとどうしようもなく悲しい別れが。時代が違うというのもあるが英雄の年齢にしてこんなにも痛ましい別れがあったのかと思うと伊集院さん本当に壮絶な青春時代だったんだなぁ・・・(TT) 家業を継ぎたくない英雄と家業を継いで欲しい父も和解、それぞれの道を出発する・・・。読み終わるのが惜しい濃い青春小説だった。数年後に再読したい。☆5つ2015/02/23




